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ベビーカーで散歩させたい…最愛の子を喪った母親の願いが叶うまで

死を見つめる仕事「エンバーミング」

「これだけはしてあげたい」

その遺体は死後10日くらい経っていた高齢者だった。

亡くなったその人は一人暮らし。普段は家族が頻繁に会いに行ったり、連絡をとっていたという。ところが、たまたま連絡をできない日が続いた。不幸にもその間に、亡くなってしまったのだ。

「ご家族は、しばらく会いに行けなかったことを悔やんでいました。ご遺体の状態がかなり悪かったので、一番いい方法で、きれいな状態で送ってあげたいから、どうしたらいいかと相談されたのです」

そう話すのは、株式会社ディーサポートの代表の真保健児さん(47)である。

「ご遺族の方はエンバーミングのことは知らなかったのですが、詳しく説明して、ケアさせていただくことになりました」

亡くなった本人は、生前「葬儀はいらない、お金はかけるな」と言っていたとのことで、葬儀は行わなかったが、家族は「これだけはしてあげたい」と「エンバーミング」を依頼されたのだ――。

生前の姿に近づける技術

「エンバーミング(embalming)」をご存知だろうか。日本語では「遺体衛生保全」と訳される。遺体を修復し、防腐処置や殺菌消毒を行うことで、長期間の保全を可能とする処置方法(技術)のことだ。

そして、このエンバーミングの処置を行うプロの技術者を「エンバーマー」という。自らもエンバーマーである真保さんが言う。

「エンバーミングを行うことによって、少なくとも10日程度、ご遺体を良い状態のまま保全できます。そのため時間的な猶予ができ、故人と自宅でゆっくり過ごしたり、故人の遺志やご家族の思いを反映した葬儀の準備が行えるようになります。

遠方にいる身内や、すぐに戻れない身内を待ってあげたいということで、依頼されるご遺族もいらっしゃいます。また、事故による激しい損傷や、病気による痛ましい姿を、何とか生前の頃の姿に近づけてほしいという方もいらっしゃるんですよ」

 

真保さんが代表を務める株式会社ディーサポートは、「尊体(遺体)業務」に伴う葬祭分野、つまり納棺、メイク、エンバーミング業務などをトータルに行い、日々故人と家族の「別れ」をサポートしている。ちなみに「ディーサポート」の「ディー」とは、「尊厳」を意味する「Dignity」である。