みずほ佐藤会長の告白「銀行員の『終身雇用・年功序列』はもう終わる」
人間にしかできない仕事は残る。ただ…そうした中、金融界きっての論客として知られる、みずほフィナンシャルグループ会長の佐藤康博氏と、新作小説『よこどり 小説メガバンク人事抗争』でメガバンクの未来や組織の在りよう、銀行員の生き方を独自の視点で描き出した作家の小野一起氏が緊急対談を敢行。佐藤氏はいきなり、「銀行員の衝撃的な未来」について語り始めた――。

対談撮影/岡村啓嗣 編集協力/夏目実侑
終身雇用、年功序列は生き残らない
小野 もう高度成長期ではありません。上司に言われたことを着実にこなすだけの人材ばかりでは、日本も日本企業は持たないでしょう。
一方で、みずほフィナンシャルグループなどのメガバンクは、終身雇用、年功序列という、これまでの日本型の雇用で組織を運営している典型的な大企業の一つだと思います。この終身雇用、年功序列行が金太郎飴のような人材を生み出している点も見逃せないでしょう。銀行の雇用の在り方は、産業界全体にも大きな影響を与えます。佐藤会長は、これからの雇用の在り方について、どのように考えていますか。
佐藤 まず、終身雇用、年功序列という戦後の経済成長を支えた日本型雇用制度は残れないと思います。日本の大企業を束ねている経団連にしても、専門的なスキルを重視するジョブ型雇用の導入も含めて、いろいろな雇用形態を検討すべきだと言っています。現在、終身雇用や年功序列がいまのまま生き残れる仕組みだと考えている人は少ないでしょう。
ただ、これからの雇用の在り方は、欧米流のジョブ型に向かえば、問題が解決するという単純なものではありません。
人生100年時代になった現在では、70歳を超えても働きたいと誰もが考えています。そのためには、入社後もそれぞれのスキルを磨きあげて、どんどん能力を高める。さらに機会があれば次の企業に移っていくという労働の流動性を高める仕組みが重要になります。これは企業にとっては良い経営をして従業員に未来を感じさせ、納得がいく仕事や待遇を提供できなければ、優秀な人材が逃げてしまうことを意味します。
それでも、雇用が流動化する仕組みを大企業がみずから取り込まなければ、多くの人材が、65歳まで会社に閉じ込められてしまいます。それでは、そうした人たちは会社で決められた仕事をこなす以外特段のスキルもなく、汎用性のない人材になりかねません。定年になってから社会に放り出すのでは、結果的に貧困老人を街に徘徊させることにつながってしまいます。