手続きを忘れると大変なことに…4月スタート「配偶者居住権」に要注意

家も税金も取られます
週刊現代 プロフィール

遺言書だけでは危ない

これで配偶者居住権の設定ができる。ただし、居住権は、遺言で設定をしただけでは不十分だ。夫の死後に妻が法務局で登記をしないと、自宅を「横取り」されてしまう危険があるからだ。

配偶者居住権の使用を検討している、塩崎徹さん(仮名・75歳)の例で見ていこう。

塩崎さんは、5000万円分の評価額の自宅に妻の聡子さん(仮名・72歳)と一緒に暮らしている。事前に「予習」をしていた塩崎さんは、遺言書で配偶者居住権を設定しようと考えていた。ところが、都内の税理士事務所で相談した結果、その考えを改めることになったという。

「妻と長男は、30年以上会話をしていないほどの不仲です。それを考慮すると、ただ遺言書を書いただけでは、居住権を失う可能性があると指摘されたのです」(塩崎さん)

問題は、塩崎さんの死亡直後に起きる。妻が配偶者居住権の登記をする前に、長男に家を売却される可能性があるのだ。

「妻の住む自宅が不動産業者の手に渡れば、遺言書に『配偶者居住権を妻に遺贈する』と書いてあっても、意味がなくなってしまいます」(前出・内藤氏)

そうなれば、妻は家を追い出され、泣き寝入りするしかない。

 

妻が自宅に住み続けるには、長男の協力を得て、法務局で配偶者居住権の登記をするしかない。ただ、それは現実的ではないと、塩崎さんは語る。

「私の死後、妻は葬式の手配や役所手続きで疲弊していることと思います。その状況で、妻から仲が悪い長男に『家に住み続けたいので協力して』と頼むような、大変な思いはさせたくない」

塩崎さんができることは一つだ。

自分が生きているうちに「登記の予約」をしておけばいい。