旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、〈ポスタルコ〉のデザイナーであるマイク・エーブルソンさんに選書してもらいました。

いい旅をしたいなら
“適当な理由”を探せばいい。

ARBITRARY STUPID GOAL
タマラ・ショップシン著 MCD×FSG(2017)
NYタイムズでも仕事をするイラストレーターがNYの日々を綴ったエッセイ。何気ない日常のエピソードから人生訓を受け取れる。

偶然が旅を面白くする。そう教えてくれたのがNY在住のタマラ・ショップシンのエッセイ『ARBITRARY STUPID GOAL』です。残念ながら日本語訳はないのですが、この中にタマラのお父さんの「なんでもいいから、適当な理由をつくって旅にでればいい」という言葉が出てきます。行き当たりばったりの旅が導く、予想外の出会いや出来事。そのかけがえのなさ。いい旅とは何か? と考えた時、最初に思い浮かんだのがこの本でした。

FOOTSTEPS IN SILENCE
ジーン・クレール、イナガキ・ナオコ・クレール著(2018)
ファッションジャーナリストのジーンが、写真家である妻ナオコと自費出版した写真集。移りゆく香港の街の一瞬が刻まれている。

もうひとつ、「旅」と聞いて思い出すのが、移りゆく香港の街並みを撮った『FOOTSTEPSIN SILENCE』です。街は生き物だと再認識させてくれた写真集。あの街を旅したいと思った時、今行かないと見られない風景がある。香港の下町を彷徨っているような感覚になる写真ですが、それで知った気にならず、自ら足を運びたい。そんな気にさせられます。

JERUSALEM
ヨタム・オットレンギ、サミ・タミミ著 EBURY PRESS(2012)
イスラエルとパレスチナのシェフによる中東料理のレシピ本。料理だけでなく、街を写した写真も掲載。見知らぬ土地の空気も味わえる。

最後は、未知なる国への興味を引き出してくれた中東の料理本。ずばり『JERUSALEM』と題された一冊で、料理を通して土地の匂いや空気まで感じられます。さまざまな問題を抱えている地域ですが、対立し合う民族でも、食文化に共通点がある。そんなことにも驚きました。

この中で特に好きなのは、カボチャをのこぎりで切っている写真。のこぎりで!? と驚きつつ、その風景を見てみたいと思うのです。そして、頭に浮かぶのはタマラのお父さんの言葉。旅の始まりはやっぱり、こんな“適当な理由”でいいのだと思います。

PROFILE

マイク・エーブルソン Mike Abelson
2000年、NYでエーブルソン・友理と共に〈ポスタルコ〉を立ち上げ、アイデアとクラフトマンシップに溢れた日用品を作る。


●情報は、2019年12月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida