「早期退職してよかった?」脱サラした60歳カフェ店主の哀しい回答

人生そんなに甘くない
寺田 淳 プロフィール

苦労はそれだけではありません。個人商店ですから、より多くの方に認知してもらうためには積極的な告知や宣伝は最低限必須ということも自覚していました。その結果、営業マン時代と同じように、上から目線のタウン誌やミニコミ誌の編集部に日参し、時には上京してメジャーな代理店に直訴、夜の接待などで予想外の経費を計上することもあったそうです。

「向こうからすれば、一地方の個人商店ごとき、『いやならお引き取りいただいて結構』という程度の存在です、ひたすら隠忍自重の時を過ごしましたよ」

「結局それまでのサラリーマン時代の仕事とも違いなんて何もありません」これが、オーナーが開店5年目にたどり着いた結論でした。

自分が思い描いた理想の仕事、理想の暮らしは現実を見ていないものだった、本当に柵のない生活を望むなら、山奥や絶海の孤島で自給自足の生活をするしかない、人を相手にする仕事は、必ず慣習や、商習慣に従わなくてはいけない。

オーナーはそう悟ったということです。

〔PHOTO〕iStock

ではなぜ、それでもオーナーは今も喫茶店を続けているのでしょうか。 

それは仕事の合間に仰ぎ見る日々変化する山々の景色に癒され、季節の移り変わりを肌で感じる事が出来る生活は、まさに憧れていた生活であり、決して少なくはない気の置けない来店客との何気ない会話や感謝の言葉に一気に疲れがかき消される喜びは変えがたいものだからです。

「全てが叶った独立・開業ではありませんでしたが、納得はしています。もし、開業を検討している時代に逆戻りしても、同じ結論になったと思いますよ」

 

好きなことを追求するための「苦労」だから納得できているということでしょうか?