「早期退職してよかった?」脱サラした60歳カフェ店主の哀しい回答

人生そんなに甘くない
寺田 淳 プロフィール

口うるさい上司や、相性の悪い同僚、居丈高な取引先担当者といったサラリーマンが避けて通れない人間関係からの解放、ノルマノルマの毎日からの解放、趣味の山歩きも好きな時に楽しめる、こだわりのコーヒーを淹れて気の置けないお客さまとの楽しい会話の日々を垣間見るに付けて、「これこそが、本来の人間の暮らし」と固く信じた彼は、脱サラを真剣に考えるようになりました。

〔PHOTO〕iStock

憧れのカフェのオーナーは当時60歳、オーナーも東京の大企業を脱サラしての独立・開業でした。開業して既に20年を迎えようという時期だったと言います。

覚悟を決めたAさんは、思いをオーナーにぶつけて今の生活について問いかけました。「夢を叶えた今の生活に満足していますか?」

オーナーの答えは、Aさんを戸惑わせる内容でした。

「叶った夢もありましたが、現実に敵わなかったことも多くありました。特に仕事上の人間関係はどんな仕事でもなくなりはしません」

まず喫茶店の仕事では、お客さまとの距離は以前とは比較できないほど近く、その分、より面倒な対応を強いられることが増えたそうです。

それどころか無責任に「こういったメニューを追加してくれ」「コーヒーチケットの割引が少ない」「裏メニューを自分だけに出してほしい」「夜も遅くまで営業して」「無休に出来ないの?」などなど、「お客様は神様だから」とばかり無茶ぶりの連続。開業から1年後、それなりの知名度を得て、集客が安定したと同時には、こういった要望への対応のせいで胃潰瘍になったというのです。

 

この他にもいい商品を扱っているからと関係を保ちたかった卸元とも、担当者と相性が合わず、最後まで信頼関係を築けなかったこともありました。