この数年、早期退職優遇制度を導入する企業が増加する一方です。
「人手不足と言っていながら、そのウラで社員を追い出そうとする会社は信用できない」「ミドルからシニアばかり標的にするのはおかしい」
早期退職に応じた方の中には、一時的な感情の爆発を抑えられず、制度を利用して会社を飛び出すものの、その後の人生は必ずしも、彼らの望む結果となるとは限りません。
私自身、現在は行政書士を生業としていますが、かつては音響メーカーのサラリーマンで、52歳の時に早期退職プログラムを活用した一人です。そうした経験を評価いただいているのか、多くの方が早期退職に関する相談に訪れるのですが、積極的に早期退職を勧めるケースはほとんどありません。明らかな準備不足や計画のなさから独立、転職を思いとどまってもらうことが、むしろ自分の役割だとすら思っています。
そこで、今回はわたしがこれまで経験した中で、早期退職優遇制度の活用を見送った人のお話をしたいと思います。
相談者Aさんは、サラリーマン生活(営業職)17年の40歳です。漠然と、彼が転職を考え始めたのは今から5年前。35歳の時でした。
毎月毎月同じように売り上げノルマをこなす日々の中で、休日にふらりと出向いた長野県の山間の喫茶店で店のオーナーの暮らしに感銘を受けたのがきっかけでした。