「キモい」がいじめっ子と差別主義者の口グセになった「根深い原因」

私たちはこの感情を克服する必要がある
Ore Chang プロフィール

ただ画像を見ただけなのに

シャラーが行なった実験では、発疹や疱瘡がある人、鼻汁を飛ばして咳やくしゃみをしている人などのスライドを被験者に見せ、見る前と見た後の血液サンプルを採取して調べた。結果、被験者たちは「病気かもしれない人」の画像をただ目にした(そして気持ち悪く感じた)だけなのに、それがトリガーとなって、血中の白血球が細菌感染に対する活発な反応をはじめていたことがわかった。*4

さらに、ほかの研究によって、赤ん坊を育てている母親は、自分の赤ん坊よりも他人の赤ん坊の大便のニオイをより不快だと感じる(自分の子供の大便がどれか隠されていても)ことが報告されている。*5 行動免疫システムは、血縁者や一緒に暮らしている人よりも、見知らぬ人の糞便に対してより「キモさ」を感じさせるというわけだ。

これは生物にとって非常に適応的な反応といえる。なぜなら、身近な人がたとえなんらかの病原体を持っていたとしても、自分もすでに免疫を持っている可能性が高いからだ。

 

行動免疫システムはその名の通り、生物の行動(behavior)に影響を与えるよう進化的に設計されたシステムだ。われわれは普通、ただ「不快だ」「気持ち悪い」と感じるだけでなく、その心理的な反応を行動(behavior)に移す。

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もし、体内の免疫系を全軍駆り出すとなると、とてつもない量の代謝資源が消費されてしまう(その現れとして、病にかかると一般に生物は衰弱し、免疫反応による発熱などで身体がだるくなる)。

このようなコストを避けるためにも、病気や感染を思い起こさせるキュー(情動反応のトリガー)に対しては過敏に反応し、病原体に対する未然の防御として接触回避行動を動機づけるようなシステムが、進化戦略的に需要された。

それに応えた心の設計こそが、行動免疫システム──“キモい”──なのである。