「キモい」がいじめっ子と差別主義者の口グセになった「根深い原因」

私たちはこの感情を克服する必要がある
Ore Chang プロフィール

生物にとって、「寄生者」はつねに大きな脅威であり続けてきた。ウイルス、病原菌、寄生虫などは、それに感染した生物の健康と遺伝子の再生産(=reproduction, 生殖)能力を著しく損なう可能性がある。

進化生物学では、生物個体とは遺伝子のための乗り物(ヴィークル)であるというふうに考える。*2 そして、ここでいう“遺伝子の再生産能力”には、単に生殖能力だけでなく「異性を惹きつける能力」(たとえばルックスや身体能力など)も含まれる。

病に罹患することで、自分自身の健康が脅かされるだけでなく、異性からも避けられやすくなるというのは、生物にとって(自らの生命と遺伝子の存続がともに危うくなるという)二重の意味で致命的な状況なのだ。

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進化論では、生物の適応度(=遺伝子の生存可能性)をおびやかす問題、すなわち自然選択による“デザイン”によって結果的に解決されるべき問題のことを「適応課題」と呼ぶ。社会的に集住して暮らす種であったわれわれの祖先にとって、この〈疾病回避〉はきわめて重要な適応課題であった。

体内には「免疫系」があるが…

進化が、病気を上手く回避できるような生物学的メカニズムをわれわれの祖先に備え付けようとする際、必然的に生じた問題とは何だったか。それは、ウイルスや病原菌などの寄生体は小さすぎて、ライオンやトラなどの捕食者のようには目に見えないということだ。

寄生者は宿主の身体に付着して、その多くは体内に潜り込み、ホストのもつ資源を勝手に活用して繁殖(=遺伝子を再生産)する。これへの対策として、宿主となるわれわれのような種は、精巧な抗寄生体防御システムを“体内に”進化させている。

──ご存知、免疫系である。 

免疫系は自然選択によって洗練された適応メカニズムだ。われわれの身体は、身体組織に侵入する寄生体をつねに検出し、それらを撃退したり、殺したり、または中和するなどの生理学的手段を動員するように、進化的に設計されている。

 

しかしこれは、ライオンやトラなどの捕食者に対する防御の仕方──われわれはそれを目にすると即座に走って逃げるだろう──と比較して、かなり後手後手の対策だ。なにしろ、体内にわざわざ菌を招き入れてから、それを撃退するというのだから。