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名古屋発、たった1mlの尿でがん「超早期診断」! 精度も5倍に!

ベンチャーならではのメリットも公開!
名古屋大学発のベンチャー企業「Icaria」は、尿によるがんの早期発見サービスを2020年中に展開することを目指しています。この技術は「大学発ベンチャー2019」でも表彰を受けました。

今回は同社の髙山和也さん(中途入社・入社1年目)からその研究内容をうかがいつつ、髙山さんが研究者の道を選んだ理由もお聞きしました。

教師からベンチャー企業へ転職

私は大学時代、遺伝子の働きについて基礎研究に取り組んでいました。発生生物学に興味を持ち、卵と精子が受精して身体がどうできていくのかというメカニズムが面白く、博士課程までの合計6年間を遺伝子の研究に費やしました。

Icaria株式会社 髙山和也さん

細かいところを突き詰めていくのが基礎研究。私には面白かったのですが、一方で世の中にはなかなか還元しにくい分野でもあります。就職を考えるようになったとき、自分がやってきたことを少しでも役に立てて活躍できる場所はないかと思いました。

 

ちょうどその頃、教師にならないかという声がかかります。生徒に生物への興味を抱かせることができれば、世の中のためになるかもしれないと思い、教育の場へと進むことを決断しました。

2018年から高校の生物教師として働きはじめますが、実際に教師になってみるといろんな限界も感じました。生物の授業以外にも多岐にわたる仕事があり、次第にここでは自分の理想としていることを実現するのは難しいと、転職を考えるようになりました。

いろいろな情報を集めていたところ目に入ったのが、尿を使った非侵襲的で高精度ながん検査について研究を重ねているIcariaのHPです。大学院では研究に集中していましたが、結果を社会に還元したい想いは強く持っていました。

そこで、具体的に研究成果をサービスにして提供していくというベンチャーや事業会社はいいのではないかと感じ、入社することになりました。

痛みもなく、より効率的ながん検査

Icariaでは非侵襲な尿による、高精度ながんの早期発見を目指した検査の開発を行っています。日本における死因の第一位ががんとなってから30年以上たちますが、今でも罹患数は増加し続けており、2019年には、日本国内の2人に1人が生涯のうちにがんに罹患するというがん研究センターの統計予測も出ています。

しかし現在のがん検査は精度が低く、見落としや偽陽性と判定されることが多いという課題がありました。しかもがん検診を受ける人は内閣府の調査で約50%と半数程度。理由としては痛みを伴うなど、侵襲的な検査が忌避理由とされている面もあります。

我々が尿を検査に使うのは、たんに非侵襲的だということだけが理由ではありません。尿や血液などの体液中には細胞外小胞体(エクソソーム)が存在し、それを捕捉する必要がありますが、尿の方が不純物も少なく、より効率的に捕捉できます。

エクソソームの中には疾患の発症や悪性化に深く関与する、miRNAが含まれています。このmiRNAは、重要なバイオマーカーであるとして近年注目されていますが、これまでは効率的にエクソソームを捕捉する技術が確立されていませんでした。

そんな折、2017年に名古屋大学大学院らの共同研究グループが、ナノワイヤデバイスを用いて尿の中のエクソソームを高効率で捕捉する新しい技術を開発しました。我々はその技術をもとに、1mlの尿からエクソソームを大量に捕捉する技術を確立しました。

この技術を生み出した名古屋大学の安井隆雄准教授(共同創業者)に、Icaria立ち上げ時からアドバイスをいただきながら、エクソソーム捕捉やmiRNA抽出方法の精度向上などを進めています。

捕捉率は従来の約5倍に

Icariaのテクノロジーにおいて他を圧倒するのは、剣山のように多くの酸化亜鉛ナノワイヤを生やした、デバイスの作製技術です。デバイス内に尿を導入し、静電相互作用によってエクソソームを捕捉します。