アルツハイマー病ってどんな病気? 正しく知って進行させない対策を

認知機能を高レベルで保つのがポイント
からだとこころ編集部 プロフィール

「手の打ちようがない」「改善しない」は本当か?

アルツハイマー病と診断されると、「"打つ手"がないのではないか」、あるいはもう改善しない」と悲嘆する方も少なくないようです。

しかし、アルツハイマー病といっても、脳のすべての機能が障害されているわけではありません。病変部の神経細胞をもとに戻すことはできませんが、それ以外の健常な神経細胞の働きをより活発にしたり、通常は使われていない脳の余力を「予備脳」として生かすことで、よりよい状態を維持することが期待できます。

また、アルツハイマー病のリスク要因を減らすことで、病気の進行を抑えることも大切です。生活習慣病やそれをもたらす生活背景などのほかにも、難聴やうつなどもアルツハイマー病のリスク要因となります。

認知機能の低下につながるリスク要因

糖尿病(高血糖)/高血圧/脂質異常症/肥満・やせ/難聴/運動不足/うつ病/睡眠障害/社会的孤立飲酒、喫煙

糖尿病や高血圧、脂質異常症などは、脳への血流障害によって起こる血管性認知症の合併リスクも高まる

このようなリスク要因を早期から排除することで、病気の進行を抑えることが期待できます。

つまり、アルツハイマー病には、リスク要因の排除という"打つ手"も、残された脳を生かす"改善の見込み"もあると言えます。とくに、リスク要因を排除することは、まだアルツハイマー病と診断を受けていない人も、予防という点で改善に取り組むことをお勧めします。

なお、アルツハイマー病治療における薬物治療では、神経細胞の働きを改善する薬剤が使われますが、原則として認知機能が低下した場合(認知症と診断された場合)に限って行われます。

妄想や徘徊は必ず出るのか

「財布を盗んだ奴がいるっ!!」と妄想したり、わめく・暴力を振るうなど興奮しやすくなったり、あるいは徘徊したりするなど、行動面や心理面の症状がつきものと思われがちですが、こうした症状は二次的なもので、本質的な症状ではありません

進行したアルツハイマー病なら必ず出てくる「中核症状」に対して、中核症状があるがために生じる可能性がある、行動面や心理面の症状を「行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia : BPSD)」と言います。

BPSDの現れ方は、人によって大きく違い、ほとんど見られない人もいます。BPSDは、中核症状があることで生じる不安や混乱が症状を強めます。治療による改善とともに、周囲の人の接し方によって、BPSDの現れ方は比較的おだやかなものになるでしょう。

中核症状

アルツハイマー病の本質的な症状

  • 記憶障害
  • 計算力障害
  • 実行機能障害(遂行機能障害)
  • 見当識障害(時間、場所、季節などを把握する力の低下)
  • 失認(五感で得た情報から状況を把握する力の低下
  • 失行(体は動かせるが、慣れている動作ができなくなるなど)

行動・心理症状(BPSD)

中核症状を背景に二次的に現れる行動面、心理面の症状

  • 妄想・幻覚の出現
  • 興奮しやすい、怒りやすい
  • うつ状態になる
  • 不安、焦り、落ち着きがない
  • 徘徊
  • 意欲低下、無関心

など

記憶や感情も失われていくのか?

アルツハイマー病の最初の症状の多くは「物忘れが増える」といった形で現れる記憶障害です。病気の進行とともに記憶障害が進んでいくことは避けられません。

また、アルツハイマー病の病変は、脳の記憶にかかわる部位である海馬から現れることが多いのですが、海馬から脳のほかの部位に広がると、それぞれの部位が担う認知機能に影響が出はじめます。

認知機能の例と低下した場合に起こりうること

記憶する
体験したことを丸ごと忘れてしまう
同じことを何回も言う、聞く
聞き忘れ、しまい忘れの増加
人やものの名前が出てこない
水道栓(蛇口)の閉め忘れ、火の消し忘れ など
時間、今いる場所、状況などを把握する
慣れた道で道に迷う など
計算する
買い物でおつりの見当がつかなくなる など
ものごとを実行する、やり遂げる
仕事や家事の段取りがつかなくなる など
文字を読んだり書いたりする、話す
理解できても、適切な言葉が出てこない
「あれ」「それ」などの代名詞が増える
漢字が書けなくなる など

しかし、初期のSCDやMCIはもちろん、認知症のレベルに達した場合でも、「うれしい」「悲しい」「怖い」など、さまざまな感情が消え去ることはありません。

日本では認知症の人が2018年末時点で500万人を超え、2025年には700万人を突破する(およそ65歳以上の高齢者の5人に1人)と予想され、そうした増加傾向はしばらく続いていくものと考えられています。

老化は誰しも避けられない道です。年齢とともに発病・進行の恐れが高まっていくアルツハイマー病は、今後患者が増加していくと考えられており、誰しも決して他人事ではない病気になりつつあります。

日ごろからアルツハイマー病の予防に気をつけるとともに、アルツハイマー病と診断された場合でも、初期段階なら認知症のレベルに進行させないような心構えを持ち、周囲の人、身近な人に患者さんがいる場合は適切にサポートできるよう、正しい知識を得るように心がけましょう。

【写真】記憶が薄れても、感情は消えない

アルツハイマー病は長い長い時間をかけてゆっくり進んでいく病気です。適切な対応を続けることで、進み方をゆっくりにして認知症につなげないことが期待できます。

できるだけ早い段階で病気に気づき、進行を速める恐れがあるリスクを排除していくこと、それが今できる最善の方法だということをご理解いただけたかと思います。

本記事は『アルツハイマー病のことがわかる本』から作成しました

健康ライブラリー イラスト版
アルツハイマー病のことがわかる本

【書影】
  • 監修 : 新井 平伊
  • 定価 : 本体1,400円(税別)
  • ISBN 978-4-06-518326-7
  • ページ数 : 102ページ

【進行を遅らせるために今、できること】

アルツハイマー病について解明されている最新情報をもとに
病気の基礎知識から認知症に至るまでの経過や、症状が進んだ場合の対応まで
イラストを使ってわかりやすく解説。
今できることに取り組んでいこうと、前向きな気持ちになれる1冊です。

amazonはこちらから