釜石・神戸の復興に尽くしてきた伝説のラガーマンたちの感動の軌跡

還暦越えのV7戦士たちが神戸で再戦
大友 信彦 プロフィール

平均年齢60歳超の少年たちがプレーで伝えたこと

そして迎えたのが、2020年1月、3度目のOB戦だった。

それは、阪神淡路大震災から25周年という節目を迎えたあと、神戸で行われた初めてのラグビーの試合だった。

釜石の最年長選手、日本代表8キャップを持つフッカー和田透は69歳に、神戸製鋼の最年長、ヒゲがトレードマークの快足ウイングとしてトライを量産した菅野有生央は61歳になっていた。

2020年1月26日、試合前の神戸・林敏之主将(左)と釜石・坂下功正主将

それでも、鉄人たちは8年前とほとんど変わらない姿で、おそらくは35年前と変わらない気持ちで、ボールを追い、走った。

還暦は越えても、試合が始まれば、やっぱり本気だ

自由自在にプレーできたわけではない。キックの空振りも、足がもつれる場面もあった。それでも誰もが笑顔でボールを追っていた。その姿に、スタンドからは温かい視線と拍手と歓声が送られた。

 

試合が終わり、マイクを持った神戸の主将、林敏之は、スタンドに向かって言った。

「若い頃、何度戦っても勝てなかったのが釜石。釜石に勝つことは僕の青春のすべてでした。今日は神戸での試合だったから、釜石のみなさんが勝ちを譲ってくれたけど、本当に楽しかった」

釜石の主将を務めたSH坂下功正は苦笑した。

「イメージではもっと早く動けてるんですよ。体が動かないけど(笑)。だけど、ラグビーをしていた習性で、相手がくればタックルしてしまうし、スクラムハーフとしてはボールをさばくために走らないといけない。スクラムハーフはキツイ仕事だということが、OBになるとわかる」

平均年齢は60を超えた。釜石の洞口孝治、神戸の平尾誠二ら、鬼籍に入った人もいる。試合前夜に行われた懇親会では、「次はないかな……」というつぶやきも聞かれた。

だが、試合が終わると、選手の感想はトーンを変えていたのだ。神戸のスクラムハーフ、60歳の萩本光威元日本代表監督は言った。

「阪神・淡路大震災から25周年という節目に、ワールドカップのスタジアムで釜石のみなさんと試合をやれて幸せでした。本音を言えば、定期戦みたいにできればいい。僕は、試合が続く限り出たいと思っています」

神戸での試合終了後の集合写真。弾けるような笑顔を見せるオールドボーイズたち

元フランス代表のレジェンド、ジャン・ピエール・リーブの言葉を思い出す。

「ラグビーは少年をいちはやく大人にし、大人にいつまでも少年の心を持ち続けさせる」

だからこそ、自分たちが楽しみたい。

平均年齢60超の中高年たちが2万6000人の前で見せたのは、かつてしのぎを削り合ったライバルたちとの再会を、当時と変わらない思いを胸に、自分たちがとことん楽しむ姿だった。

その姿を見せることが、ともに被災し、ともに復興の道を歩んできた神戸の、釜石の、仲間たちへのメッセージになると信じて。