カネボウやJAL(日本航空)などの企業再建で有名な冨山和彦氏(経営共創基盤代表取締役CEO)による冷徹な企業分析が展開されている。
冨山氏は、企業の寿命について著書『選択と捨象』のなかでこう記す。
〈実は日本の企業の年間創業率と廃業率はいずれも4%前後。欧米企業はいずれもだいたい10%である。この逆数(数字Aに対してA分の1を「Aの逆数」という)が平均存続年数になるので、欧米では会社の寿命は平均10年、先進国の中で突出して長い日本でさえ25年に過ぎない。
私たちの平均寿命の3分の1以下しか企業の寿命は持たないのだ。今後、成長志向で新陳代謝を促進していけば、欧米並みに10年になる日が来るかもしれない〉
この予測は正しいと思う。日本でも同じ企業に一生勤める人はこれから少数派になるであろう。
かつて画期的なイノベーション(技術革新)を起こした企業が再びそれを起こすという発想が幻想であることがよくわかる。
〈イノベーションが起きるときに、それを起こすのは、かつてのソニーやホンダがそうだったように、常に「若くて小さい会社」なのである。古くて大きな会社の「変わる力」は、若くて小さな会社に比べて乏しい。
ウォークマン、プレイステーション、VAIOなどの革新的な商品を生み出し続けていたソニーに対し、「ソニー復活」を期待する人は多い。でも、考えてみてほしい。
創業して70年弱、従業員13万人超の「古くて大きな会社」が、今さら「若くて小さい会社」にそうそう簡単に変われるだろうか。
これは、万国共通の事象である。アメリカでさえ、創業30年を過ぎた会社はどこもイノベーションを起こしていない〉