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新型コロナで経済崩壊危機…中国共産党の「人民戦争」に勝機はあるか

ついに全人代の延期も正式決定したが…

「中国の問題」から「世界の問題」に

北京時間の2月24日17時52分(日本時間18時52分)、ついに中国国営新華社通信が、わずか5行からなるニュース速報を出した。

〈 昨今、中国人民政治協商会議第13期全国委員会は第33回主席会議を開き、全国政治協商会議第13期第3回会議に関する事項の延期について研究した。そして中国共産党中央委員会の新型コロナウイルス肺炎の疫病の防止と経済社会の発展活動の総合的な展開を統合して推進し、全国各級の政治協商会議組織と多くの政治協商委員が積極的に身を投げ出して疫病の防止に向けた打撃戦に打ち勝つため、もともと3月3日に開くことを予定していた全国政治協商会議第13期第3回会議を適当な時期に延期することを建議した。具体的な日時は追って画定させる 〉

小難しいことが縷々書き連ねてあるが、これによって全国人民代表大会(国会に相当)の延期が、事実上決まった。

中国は毎年、年に一度、3月3日から全国政治協商会議(政府への唯一の公的諮問機関)を開き、3月5日から全国人民代表大会(国会)を開いている。会期はそれぞれ10日前後だ。それが政協を延期すれば、当然ながら人大も延期である。1978年に鄧小平が改革開放政策を始めて以降、この日程が延期されるのは初めてのことである。

それだけ、新型コロナウイルスの猛威が収まらないということが第一。第二は、習近平政権に批判の矛先が向けられるのを恐れたためだろう。ともあれ、年に10日前後しか開かない国会が開けないというのだから、これは由々しき事態だ。

世界に目を向けると、先週末、2月22日と23日にサウジアラビアで行われたG20(主要国・地域)蔵相・中央銀行総裁会議は、新型コロナウイルスがもたらす世界経済への影響の問題一色となった。共同声明でも、「新型コロナウイルスの感染拡大を含む世界経済のリスクの監視を強化する」と明記された。

だが発生源の中国は、習近平主席の忠僕である劉昆財政部長も、李克強首相の側近である易綱中国人民銀行長も不参加だった。このため、「中国は責任を取るつもりがないのか」と、各国の参加者たちは苛立った。

当初は「中国の問題」に過ぎなかった新型コロナウイルス問題が、二重の意味で「世界の問題」になってきている。第一に、感染者が世界中に蔓延し始めたことだ。そして第二に、世界経済に深刻な影響を及ぼし始めたことだ。

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これは勝手な推測だが、当初アメリカのドナルド・トランプ政権は、台頭著しいライバルの中国が、新型コロナウイルスで七転八倒している姿を、対岸の火事として眺めていたのではないか。孫氏の兵法にもあるが、ベストは戦わずして勝つことであり、戦わずして勝つためのベストは、相手が自壊してくれることだ。非情な国際政治の世界では、敵失ほどありがたいものはない。

アメリカからすれば、1月15日に貿易戦争で中国と第一段階の合意に達したものの、それは秋の大統領選挙という特殊事情を前にしばし休戦しただけであり、中国の妥結内容に満足しているわけでは決してない。それだけに、特にマイク・ペンス副大統領以下の「軍事強硬派」と言える人々にとっては、中国の国力が短期間に大幅に減退していくことは、思いがけぬ勝利と捉えたはずである。

そのため、1月31日に中国人を事実上、入国禁止にして、あとは高みの見物を決め込んでいた。ところが、日が経つにつれて、中国のコロナウイルス問題によって、アメリカ経済もボディブローのようにダメージを受けることが明らかになってきたのだ。

中国は世界一の製造業大国であり、国連の「世界工業生産レポート」(2019年3月版)によれば、2018年の世界の工業生産額の25.2%を占めている。そのため、「世界の工場」がストップすれば、アメリカも無事ではいられないのだ。

 

2月9日、アメリカの大手医療機器メーカーのヴァレリタス社が経営破綻し、同業のジーランド・ファルマ社に売却されることが発表された。中国からのサプライチェーンが崩壊し、製品を供給できなくなったためだ。これほど医療機器が必要とされている時に、大手医療機器メーカーが倒産するとは、皮肉なものである。

アップル社も2月17日、iPhoneの中国での生産がストップしていることを受けて、今年第1四半期の業績見通しを下方修正すると発表した。同社の今後の5G(第5世代無線通信システム)戦略にも影響が出てくるのは必至だ。

もしかしたら、アメリカ企業は今後、「No China」(中国抜き)のサプライチェーン構築を図っていこうとするかもしれない。2年近くに及んだ米中貿易戦争に続き、ファーウェイ問題を中心とした米中5G戦争も激しさを増している。そんな中、新型コロナウイルスという新たな問題が起こってきたとなれば、やはり中国はリスクが高すぎるという判断も成り立つからだ。

そういったことも含めて、2020年の中国経済が試練の年となるのは、もはや必至の情勢だ。

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