自分がどのように生きていきたいか。結婚も、離婚も、仕事も、出産や育児も、自分がどうしたいのか、で選択をしていく。そこに重要になってくるのは「お金」だ。お金のためだけに生きるのではなく、生きるために必要なお金をどのように生み育てていくか。誰もがそれを自分事として考える必要があるのではないだろうか。

ライターの馬場千枝さんは、自身も様々なお金の失敗を経て、投資について多くを学んできた。そしてその現場でいろんな女性たちに出会ってきた。お金と人生は切っても切り離せない。本連載では「お金」の話を中心に、様々な女性たちの人生をお伝えしていく。第1回は離婚後にお金のことをもっとちゃんとしようと思った女性が、投資した瞬間から波乱万丈になってしまった、ある生き方。

株価半額、派遣切り…
なんで私ばかり不幸になるの

不幸というのは、どういうワケか続いてしまうことがある。

12年間の結婚生活にピリオドを打ち、月森ひな子さん(仮名・当時36歳)は両親と祖母の暮らす実家に戻ってきた。元夫に突然、離婚を切り出され、1週間もしないうちに別居生活に入り、2カ月後に離婚届を提出。元夫は金遣いの荒いところがあり、あとから考えると借金から逃げたのかとも思えたが、ひな子さんにははっきりした理由はわからなかった。ただ、元夫の一方的な要求で唐突に結婚生活が終わり、茫然自失の状態になったのだ。

子どもはいなかったから身軽ではあるし、大手メーカーの派遣社員として働いていたので経済的には困らなかったが、生活環境が一変し、先行きが不安でしかたなかったというひな子さん。暗い顔をしていた彼女を心配して、様子を見に来た兄が、株と投資信託購入の話を切り出した。

「おまえも独り者になったんだから、お金のこと、ちゃんとしとけと言って、トヨタ株とさわかみファンドという直販投信(販売金融機関を通さず、独立系運用会社が直接販売している投資信託)の積立投資を勧めてきたんです。当時、お金のことは全然わからなかったんですが、メンタル的にも不安が大きかったので、なにか頼るものが欲しくてトヨタ株を買いました。さわかみファンドも月1万円から積み立てができるし、お金が貯まるからいいよと兄に言われて、積み立てを始めました。半信半疑だったけど、まぁ、1万円ならいいかなという軽い気持ちです。他の人に言われたらやらなかったけれど、自分自身も投資しているという兄の助言だったから始めたというのも大きいですね」

ひな子さんが初めて投資の世界に踏み出したのが2007年。これが実に微妙な時期だった。2008年9月、未曾有の金融危機であるリーマンショックが勃発。株価が怒濤のように下落を始めたのだ。

リーマンショックのときは株価に泣かなかった投資家はいないだろう(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

トヨタ株を100株買うのに、60万円くらい払ったんです。それがあっというまに30万円くらいになってしまって、本当にがっくりです。兄には言わなかったけど、あー、騙されたと思いました。その頃、さわかみファンドは月に1万円の積み立てを3万円に増やしていたんです。それも価格がどんどん落ちていく。怖くて、細かい金額は見なかったけど、株価が落ちているんだから、当然、投資信託も落ちますよね」

まったくその通りで、2007年7月に2万円台をつけたさわかみ投信の基準価格は、2008年10月には9000円台に突入。まさに半額である。これまでひな子さんがコツコツと積み立てた50万円前後の投資信託の評価額は相当下落してしまったと考えられる。

がっくりしているのはひな子さんだけでなく、日本社会全体もそうだった。なんと派遣されていた大手メーカーが不景気のあおりを受けて工場撤退を決め、ひな子さんの職場がなくなってしまったのだ。離婚、株価暴落、派遣切り。これ以上、続きようがないくらいの不幸の連発だ。

「仕事も家庭もお金もなくなって。なんで私ばかりこんなに辛い思いをするんだろう。もう生きていられない。死んじゃおうかな……。そんな気持ちでした」