国内でも、経路のわからない感染が増えている。国内の感染者は700人を超え、これからも増える見込みだ。中国では日本を「先月の武漢のようだ」と心配していると聞く。また、橫浜の大黒ふ頭に停泊していたクルーズ船では、隔離対象者を除いて、検査の結果陰性とわかった970人が下船したが、多くの人の予想通り、下船者から発症者が出た。クルーズ船の対応について何が問題だったのか、改めて考えてみたい。

見えてきた“日本型組織”の問題

2月18日に、神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎氏はYouTubeで動画を公開し(現在は削除)、船内でのゾーニング(ウイルスがあるかもしれないレッドゾーンとそうでないグリーンゾーンの区分け)が不完全であり(動画で岩田氏は「ぐちゃぐちゃ」という言葉を使用した)、感染症の専門家が常駐しておらず、彼らに現場での対応に関する決定権もないことを指摘した。

〔PHOTO〕岩田健太郎氏のYouTube動画(現在は削除)より

その後、沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長で、厚生労働省技術参与の高山義浩氏が、「不完全ながらゾーニングをしていたこと」「感染症の専門家が乗船していたこと」をフェイスブックに投稿すると、その投稿は「冷静な反論」として医療従事者を中心に一般の人にも多く共有された。

しかし、筆者が両者の動画や投稿を見る限りにおいて、両者の提示するファクトに大きな隔たりがあるようには見えなかった。「ゾーニングをはじめとして、感染対策は不完全」「感染症の専門家は乗船してはいるが、決定権はない」というところに、両者の主張からよみとれるファクトは集約される。

また、岩田氏は乗船している間、「できていないけれど、仕方ない」という声を何度か聞いたと言っている。一方で高山氏は、「最初から感染管理についてアドバイスせず、信頼関係ができてから(アドバイスしたほうがいい)」と岩田氏に助言したと書いている。これは両者ともに、“日本型組織”の問題であると読めなくもない。

長期的な信頼関係を築き、できるところから少しずつ改善していく(抜本的な改革は難しい)のが、日本における一般的な組織の特徴ともいえるが、このような緊急事態においては、たとえお互い知らない人であっても、極論を言うと嫌いであったり信頼関係が無かったりしても、スムーズに働けるような「仕組み」が必要ではないだろうか。