怪しい一族の豪華なパーティ

全員無事に着席し、会が和やかに始まった。サービスにはそつがない。日常からかけはなれた上質の中華料理がつぎつぎと運ばれてきた。ふたりとも、少しずつゆっくり大事に味わって食べていて、それだけ見れば可愛いおばあさんたちである。
 

が、華麗に盛り付けられたデザートまでコース料理が進んだとき、怖れていたことが起きた。

「きれいでおいしいわねー」
「そうねー」
残しても、ウチには持って帰れないわ、ネズミが出るから
「そうねー」

全員息を呑んだ。声が大きい。衝立で分けただけのスペースだから、ほかの客にもぜったい聞こえている。こんな会話が聞こえたら嫌だろうなあ。私たちが不潔で不審な客だと疑われるのも御免である。なんとかここで止めたい。

「夜になると、運動会するの。ネズミが」

ウェイターのいぶかしげな表情が目に飛びこんでくる。
空気読めないふたりは続けた。

「今なんか、私たちがいても平気で出てくるのよ、チュウって」
「ねー」
「私たちの布団の上も走るの」
「ねー」
「だから部屋にほうき置いて、それで追っ払うの」
「ねー」

参った。ねー、がハモっている。

綺麗好きだった母が、その環境から、なんど脱出させようとしても自分から戻る。認知症というのはそういう状態になるということなのか Photo by iStock

見かねた私が「おばちゃん、ここ、食べ物屋さんだから」と耳打ちすると、伯母は肩をすくめて口をつぐんだ。