いつの間にか、息子のどこがダメとか、これができないからどうしようなどと思わなくなった。それよりも、どうやったら9時に寝かしつけられるか、が命題だった。多忙な夫に頼れないワンオペ育児の工夫を日々考え続けた。

そして、早寝早起きは、親である自分も体調が良くなるという副産物もあった。21時に寝かしつけただけで、こちらも達成感を覚えた。朝起こすのをやめ、自分で起きてくるのを待った。二度ほど遅刻したが、起きられるようになった。
自分で起きてきたとき「すごいね。自分で起きられたね」と言った時、「えへへ」と照れくさそうに笑った顔を今でも覚えている。

早寝させられないことに
落ち込まないで

幸いにも、子どもは習慣化するのが早い。特に、息子はそういうタイプだった。いつしか朝早く起きて勉強するようになり、教室でも落ち着いてきた。さまざまなことが劇的に変わっていく。小学3年生から始めた家族全員の洗濯物をたたむ手伝いは、高校受験まで続いた。2つ下の娘も難なく兄に続いてくれた。

テストの点が上がるとか、何か賞を取るといった認知できる能力は何もない。が、中学校に上がるとき、担任の女性教師が「中学に行って伸びる基礎は作れました。Aちゃんはこれから伸びていくと思います」と言った。担任の言う「基礎」は、学びに向かう力、非認知能力だろう。

ただ、なかなか早寝早起きがうまくいかなくても、落ち込まないでほしい。脳には「可塑性」といって、いつ何時でも変われる可能性を持っている。この可塑性も成田先生に教わった言葉だ。中学、高校、もっといえば成人していても、脳育てはやり直せる。子育てだってやり直せるのだ。

実験台だとおっしゃっていた成田先生の娘さんは医学生。知的で素敵な女性に成長されている。
私たちの実験は終わった。先生は想定通りだろうけれど、私にとっては仮説をはるかに超えた結果だった。
 

子ども中心の時間にして前倒ししたくても、仕事が忙しいとどうにもならないこともある。寝かせようと前倒ししてもなかなか寝なくてイライラすることもあるかもしれない。でも早寝させられない自分を責めるのではなく、時間をかけていたことをかけなくするなどの工夫をしてみてもいいのではないだろうか。それによって「時間」というとても大切なものを手に入れられるのであれば、親にとっても子にとっても健やかな結果になるはずだ Photo by iStock