ジャーナリストの島沢優子さんは、教育の現場を長く取材してきた。スポーツ指導の場もしかりである。そうして自分たちが「された教育」だけではなく、正しい知識をもつことが重要だと心底感じるようになる。そんな「子どもが本当に伸びる子育て」を考える連載が「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」だ。

実は、島沢さんには小学高学年のときに息子からドロップキックをされた経験がある。島沢さん自身、子育てに悩み、迷い、落ち込んできた。ときには虐待まがいの叱り方をしてしまったこともあるという。その悩みから解放してくれたのは、ある「実験」だった。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」今までの記事はこちら

自立しているわが子に驚き

高校時代から学んでいたドイツ語のブラシュアップのため留学していた息子が、先週帰ってきた。大学4年生を休学し、1年間ハイデルベルクにいたのだ。

久しぶりの実家に戻った息子、若いから時差ボケがないのか、翌日からよく動く。まずは私の仕事部屋の隣室を片付け始めた。以前使っていた部屋にWi-Fiが入らないため、自室にするという。
「母さん、片付けて」と命じられ、言われるがまま手を動かす。
「まず、捨てるものと、使うものに分けてね。使うかもしれない、という希望的観測は、この際省くように。捨てるものは俺が仕分けるから」

息子の頭の中には、目の前のぐちゃぐちゃな部屋をどう整理したらいいのかが見えているようだった(写真はイメージです。写真の人物と本人は関係ありません)Photo by iStock

むむむ。それは、はるか十数年前、この母が子ども部屋を片付けぬお前様に申した言葉ではないか。「老いては子に従えや」などとブツブツ言いながら手を動かす。すると半日で、自分の書類や雑誌、本など、ほぼゴミ屋敷状態だった部屋が見事に片付いた。1年以上片付けられなかったのに

通う大学は小さな公立大学で、エリートでも何でもない。だが、わたくしの友人、仕事仲間からの彼に対する評価は非常に高い。
「気が利いて優しい」「母親はだらしがないのに、ムスコはえらい」
産んで育てたのに、母は悪い例として比べられる。

息子は今日も家族の茶碗とシンクを洗い、部屋を片付ける。インターンの予定を整え、空いた時間はドイツ語を聴き、ドイツ語の本を読む。今朝ほどは「私服で来いと言われたから」と、ジーンズにジャケットでインターンシップの面接へ。
ピカピカのシンクを眺めながら、息子の「学びに向かう力」を頼もしく思った。