子どもの興味を引き出すユニークな授業で評判の「探究学舎」。現在ここで講師をつとめている森田太郎さんは、13年公立小学校の教師をつとめ、「森田先生が担任になると子どもたちがやるきになる」と評判を呼んでいた。

そんな森田さんが自身の経験をもとに伝える連載「タロー通信『風のとびら』」、今回は中学受験をめぐる学校での繊細な空気にどう対応してきたかを伝えてもらう。中学受験をする子どもたちは、先に多くを勉強している。授業中「それ知ってる!」という子どもたちと、「そんなの習ってないよ」という子どもたち。両方にとって「いい授業」はどのようにして実現できるのか。担任として6年生のクラスを何度も持っていた森田さんが実感し、実践したこととは。

森田太郎さん連載今までの記事はこちら

受験の前にしたキャッチボール

中学受験も一区切りしたころでしょうか。小学校の教員になる前のある時期、進学塾で2年ほど講師をしていたこともあり、「受験が終わったかな」「もうすぐ発表かな」と気になります。教員時代は4回ほど6年生の担任をしたので、塾講師とは別の立場で受験生を見守りました。

今回は、受験生と教員のかかわりについて考えてみたいと思います。
ある男児は、受験のため放課後に自由な時間がなくなったこともあって、とてもイライラ、ピリピリしていました。友達と遊べない。好きな野球もできない。教室でけんかなどしたこともなかったのに、仲間とのいさかいが増えました。

そのことに気づいた僕はある日の放課後、塾へ行く前に少し時間があると言うその子を誘って体育館で野球をしました。ふたりで汗びっしょりになって、とても楽しかったです。

Photo by iStock

その後、その男児は落ち着きを取り戻しました。
彼は野球が大好きだったのですが、地元の公立中学に野球部はありませんでした。そんなこともあって、野球部のある私立の中高一貫校を目指しました。

新年早々、久々に立派な社会人として働いている彼と久々の再会をしました。すると、体育館での野球のことをちゃんと憶えていました。
「森田先生が僕を誘ってくれたんだよね。暗い体育館の中で野球したね。軟式ボールと金属バットで、体育館なのに思い切り打てって言われて、え?いいの?って思ったけど、思い切りやった。今でも思い出すよ」