新型コロナ発生源と疑われる中国「野生動物食」の知られざる実態

これぞ人類の伝統文化
北村 豊 プロフィール

「野味」食材案内

それでは「大衆畜牧業味」が販売していた商品を「大衆畜牧野味」と題された価格表に従って見てみよう。当該価格表には42種類の商品名が書かれていて、生きている動物をそのまま販売したり、「活殺現宰(その場で殺して食肉に加工する)」、急速冷凍、宅配、長距離託送代行などのサービスが可能となっていた。扱い商品を分類して具体的に示すと以下の通り。

 

【鳥類】孔雀(クジャク)、大雁(ヒシクイ)、鴻雁(サツラガン)、火鶏(七面鳥)、闘鶏(シャモ)、野鶏(コウライキジ)、斑鳩(キジバト)、竹鶏(コジュケイ)、蔵鶏(チベットニワトリ)、線鶏(カポン=去勢されたニワトリ)、育檳鳥(アライソシギ)、珍珠鶏(ホロホロチョウ)、貴妃鶏(ゴイシチャボ)、鷓鴣(シャコ=キジ科の鳥)、土鴿(カワラバト)、鉄雀(スズメ)、白鵞(ハクチョウ)、香椿鳥(ライチョウ)、駝鳥(ダチョウ)、鴨豚(ノバリケン=鴨科の鳥)

【獣類】山羊(野ヤギ)、野兎(野ウサギ)、竹鼠(タケネズミ)、麝香鼠(ジャコウネズミ)、青根貂(マスクラット=ネズミ科)、海狸鼠(ヌートリア)、袋鼠(カンガルー)、松鼠(リス)、狐狸(キツネ)、狼仔(オオカミの子)、果子狸(ハクビシン)、刺猬(ハリネズミ)、狗狸獾 ( アジアアナグマ)、猪狸獾(ブタアナグマ)、花猪(ハナイノシシ)、石頭猪(セキトウイノシシ)、狍子(ノロ=鹿科)、野猪(イノシシ)、豚鼠(テンジクネズミ)、荷蘭猪(テンジクネズミの別称)、蔵香猪(チベットミニブタ)、豪猪(ヤマアラシ)、湘猪(湖南ブタ)、香豚(ミニブタ)、氂牛(ヤク=ウシ科)、駱駝(ラクダ)、梅花鹿(ニホンジカ)、麂子(キョン=シカ科)、樹熊(タケネズミ)、鳥梢蛇(カサントウ=無毒の蛇)
<注>日本のメディアには「樹熊」をオーストラリア原産の「コアラ」と勘違いして報じたところがあったが、「樹熊」は中国で「芒熊」と呼ばれる、別名「タケネズミ」を指しているようだ。そうなると価格表上に「タケネズミ」が重複することになるが、同じタケネズミでも種類別に名称を変更している可能性が考えられる。

【水生類】娃娃魚(オオサンショウウオ)、鰐魚(ワニ)、山亀(ヤマのカメ)、山瑞甲魚(イボクビスッポン)、海蛇(ウミヘビ)、虎紋蛙(トラフガエル)、水貂(ミンク)
 
【虫類】蜈蚣(ムカデ)、金蝉(セミの幼虫)、蝎子(サソリ)、蝸牛(カタツムリ)、蜂蛹(ハチの子)、蚕蛹(カイコの子)、螞蚱(イナゴ)、木虫(カミキリムシの幼虫)、竹虫(竹象鼻虫の幼虫)

主な商品の価格を見てみると以下の通り。

生きたクジャク :500元(約8000円)/羽
クジャクの肉  :350元(約5600円)/羽
生きたハクビシン:130元(約2080円)/斤(=500グラム)
ハクビシンの肉 : 70元(約1120円)/斤
生きたタケネズミ: 85元(約1360円)/斤
タケネズミの肉 : 75元(約1200円)/斤
小さな生きた鹿 :6000元(約9万6000円)/匹
鹿のペニス   :400元(約6400円)/本
ムカデ     :5元(約80円)/匹 <価格表上で最安値なのがムカデである>

中国語版のウイキペディアには、「ハクビシンは体躯が痩せて長く、成人の体長は45~65センチメートル、体重4.5~8キログラム」とある。上述の通り、生きたハクビシンは130元/斤(=500グラム)あるから、体重4.5キログラムのハクビシンの販売価格は1170元(約1万8720円)/匹となる。これが高いのか安いのか判断できないが、生きたハクビシンの価格はハクビシンの肉より1斤(=500グラム)当たりで60元(約960円)高いから、殺してすぐ食肉に加工した方が新鮮で美味なのであろう。

華南海鮮市場が新型コロナウイルスの発生源として報じられたことで、広く知られることになったのは「竹鼠(タケネズミ)」である。タケネズミは養殖されている食用のネズミである。ここでいうタケネズミは中国の中部・南部に幅広く分布している「中華竹鼠」を指すが、彼らの体長は30~40センチ、体重1.5~3キログラムであるという。

価格表では生きたタケネズミは85元/斤とあるので、体重1.5キログラムのタケネズミの販売価格は255元(約4080円)/匹となる。4.5キログラムのハクビシン1匹と1.5キログラムのタケネズミ3匹(合計4.5キログラム)の価格比較では、前者が1170元に対して後者が765元で、ハクビシンの方が高価であることが分かる。

なお、鹿のペニスというのは滋養強壮に効果のある食材で酒に漬けて飲むのが一般的であり、人々の需要は大きい。筆者は甘粛省の山奥にある村落で「金銭肉」と呼ぶ円形で真ん中に穴が開いたおつまみ様の肉を食べさせられたことがあったが、それは驢馬(ロバ)のペニスを輪切りにしたものだった。食べた後でその事実を知らされて、思わず自分の股間に痛みを感じた覚えがあるが、どのような味だったかは記憶がない。

タケネズミ:photo by GettyImages