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新型コロナ発生源と疑われる中国「野生動物食」の知られざる実態

これぞ人類の伝統文化

2月11日、世界保健機関(WHO)は中国湖北省の武漢市を発生源とする新型コロナウイルス(2019-nCoV)によって発症する感染症をCOVID-19(coronavirus disease 2019)と命名したと発表した。

また、国際ウイルス分類委員会(ICTV: International Committee on Taxonomy of Viruses)のコロナウイルス研究部会は、今まで暫定的に2019-nCovと呼ばれていた新型コロナウイルスの正式名称を「SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)」と命名した。

2002年11月に中国広東省で発生し、2003年8月に沈静化するまで世界中で感染を拡大させた「SARS(severe acute respiratory syndrome)」の日本語は「重症急性呼吸器症候群」であるから、SARS-CoV-2の日本語は「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」ということになる。

 

「華南海鮮市場」発生説は濡れ衣?

さて、2019年12月31日に武漢市衛生健康委員会は「医療機関が診察した原因不明な肺炎患者の多くが、華南海鮮市場と何らかの関連性を持つことを発見した」と公表した。

これを受けて、翌2020年1月1日に武漢市江漢区市場監督管理局と武漢市江漢区衛生健康局は連名で公告を発表し、華南海鮮市場に対して衛生環境整備のために消毒作業を実施する名目で市場を休業するよう命じ、再開時期は別途通知するとした。

1月1日に華南海鮮市場が閉鎖された直後に、中国政府の「中国疾病予防控制中心(中国疾病予防コントロールセンター)」(以下「疾病中心」)から派遣された研究チームが華南海鮮市場へ出向き、肺炎患者と関連すると思われる商店や関係者から集中的に515件の環境サンプルを採取した。

また、同研究チームは1月12日にも華南海鮮市場を再訪し、同市場内で野生動物を販売する「野味(食材としての野鳥や野獣)」を扱う商店から70件の環境サンプルを採取した。

これら585件の環境サンプルは実験室へ送られて検査が行われたが、そのうちの33件から新型コロナウイルスのDNAを検出したし、陽性の環境サンプルからウイルスを分離することに成功したと疾病中心は表明した。

さらに、疾病中心は、「この検査結果は新型コロナウイルスが華南海鮮市場の『野味』商店で販売されていた野生動物を発生源としていることを示している」と断定したのだった。

華南海鮮市場は5万平方メートルの総建築面積を誇り、市場内は東・西両区に分かれ、鮮魚を含む海産物、食肉、「野味」などの1000軒近い商店が軒を連ねている。問題の「野味」商店は西区の奥まった場所に十数軒が集中しており、東区にも数軒存在するが、彼らは各種の野生動物を販売して少なからぬ顧客を集めている。

1月中旬に中国のネット上に大きな赤い文字で「大衆畜牧野味」という表題が書かれた価格表で、印刷された商品名の横に価格が手書きされたものの写真が投稿されて、ネットユーザーの注目を集め、中国社会で大きな話題となった。

この価格表に着目した北京紙「新京報」の記者が1月21日に武漢市の華南海鮮市場を訪れ、東区の北側にある後附街7-13号で「大衆畜牧業味」と書かれた看板を見つけた。当然ながら同店は休業中で閉店していたが、記者が華南海鮮市場を探訪した記事を書いたことで、「大衆畜牧業味」は知名度をさらに高めたのだった。

中国ネット上より

2月19日公開の「新型コロナの発生源は『武漢の華南海鮮市場』説は誤りの可能性」の記事で報告したように、世界的な医学雑誌「ランセット」のオンライン版が1月24日付で掲載した中国人研究グループの論文は、「武漢肺炎は初期の段階では華南海鮮市場とは何ら関連なく発生した」と述べている。

恐らく、この論文は華南海鮮市場の「野味」商店で販売されている野生動物は新型コロナウイルスの発生源ではなく、中間宿主でもないということを示しているのではないだろうか。