猫にとっては特に深刻
乳腺腫瘍――乳がんと聞くとどんなことを思い浮かべるだろうか。
最近乳がんとの闘病生活を経て社会復帰している女性をメディアなどで見る機会も多く、「治る病気」という認識に徐々に変わっていっているかもしれない。
犬や猫でも、若齢で避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率はかなり低くなることが知られている。
避妊手術を受けていない犬の乳腺腫瘍の発生リスクは、初回発情前に避妊手術を受けた犬の約200倍、2回目までに手術を受けた犬の約12.5倍である(文献1)。
猫では、1歳未満で避妊手術を行なった場合、乳腺腫瘍の発生率は86%低下する(文献2)。
また、犬の場合は、早期に発見して適切な治療を行えば、その後天寿を全うできることもある。しかし、腫瘍に気づくのが遅れた場合や、無治療のまま腫瘍が大きくなってしまった場合は、命を落とすことも十分考えられる。
一方で、猫の乳腺腫瘍は、どんなに小さくても見つかったらすぐに手術をしなければならないほど深刻で、そして命に直結するとても怖い病気だ。
今回はそんな犬と猫の乳腺腫瘍について取り上げたいと思う。
早期発見するためには?
そもそも、犬や猫の乳頭が何対あるかすぐに答えられる人はどのくらいいるだろうか。避妊済みの犬や、妊娠中でない猫の乳腺組織は普段はしぼんでいるので、普段から乳頭を特別に意識していないとこの問いに答えるのは難しいだろう。
乳頭は、犬は5対、猫は4対である。たまに片方だけ不規則に並んでいて数が少なかったりする場合もあるが、おおむねこの通りである。未避妊の犬はわかりやすいのだが、猫はお腹側もびっしり毛で覆われているので非常にわかりにくい。毛をかき分けてお腹をよくよく触ってみると、数が確認できるだろう。
犬の場合、乳腺腫瘍は、この乳頭とは別の、コリコリした硬いできものであることが多い。まだできものが数ミリと小さいうちは、上からなでたくらいでは分からないことも多く、乳頭の周りの皮膚を軽く指でつまんでチェックすると発見できることもある。
これは私の主観になるが、早期の乳腺腫瘍は皮膚に小石のような硬いものが埋まっていて、ゴリゴリしたものが触知できる、といった感じだ。