11人の女性のうち1人が乳がんになると言われているほど、女性にとって乳がんは身近な病気だ。しかし早期発見により完治率もとても高いものでもある。

実は犬や猫にとっても、乳腺腫瘍、つまり乳がんは決して遠い病の話ではないという。特に、避妊手術をしていない場合は乳腺腫瘍のリスクが高いと言う。獣医師であり作家である片川優子さんによる連載「ペットと生きるために大切なこと」第8回の今回は、犬や猫の乳がんについて、現状と早期発見に大切なこと、そして万が一そうだったときの対処法を伝えてもらう。

片川優子さんの今までの連載はこちら

プードルのお腹の腫瘍

「お腹のできものが最近大きくなって……」
そう言ってプードルを連れて診察室に入ってきたオーナーは、困った顔をしていた。
数年前にお腹にできものができ、他院にて乳腺腫瘍だろうと仮診断がついたものの、そのまま様子を見ることにしたそうだ。

しかし腫瘍は徐々に大きくなり、ついに先端部に穴が空いて、しみ出てくる体液で常に腫瘍の周りがじめじめとしめった状態になってしまったのだという。愛犬も気にして舐めるため、さらに悪化して穴が広がってしまったとのこと。
家の中で放し飼いをしているため、家のラグやソファなどに体液がつく上、舐めて悪化するのを防止するため患部に何かを巻こうにも、毛が邪魔をしてうまく巻けずに困っているという。

(写真のプードルは本文のプードルとは別の犬です)Photo by iStock

全身を精査した結果、このプードルには残念ながら肺転移が見つかった。肺転移をしていると、たとえ手術でお腹の腫瘍を切り取ったとしても、もう長くない。

オーナーとの話し合いの末、手術や抗がん剤などの積極的な治療はせず、対症療法を行うことになった。自分で舐めないよう患部にはガーゼを当て、服を着せることとし、こまめにガーゼを交換して患部を清潔に保ってもらうようお伝えした。
数ヵ月後、このプードルは亡くなった。まだ腫瘍が小さいうちは、手術を嫌がるオーナーも多い。しかし、もっと早く、初めて乳腺腫瘍に気付いた時に手術をしていれば……と思わずにはいられない一例だった。