彼の独立は青天の霹靂

愛美さんにとって、伸隆さんの独立は青天の霹靂だった。会社を辞めるほんの3ヵ月ほど前に聞かされ、驚いた。

「いつかは独立するんだろうな、とは思っていましたが、こんなに早くとは。でも、同じ職場で彼の仕事ぶりを見てきていたので、何の不安もありませんでした。それならそれで、じゃあ私はどうしよう? と考えたときの選択肢が、私の中では『彼を手伝う』しかなかったんです」と、愛美さん。

伸隆さんも、愛美さんがついてきてくれることを前提に話をしていた。「こんなお店がつくりたい」「新橋でやろうと思う」「こんな物件が見つかった」。リアルタイムで話をしてくれるものの、相談ではなく報告。「いつも先に決めちゃってる」と、愛美さんは笑う。

愛美さんはウェディング会社への就職が決まっていた。しかしエー・ピー・カンパニーで働く人たちの姿に惹かれ、就職したのだという 撮影/杉山和行

伸隆さんが決め、愛美さんがついていく。しかし、決して主従関係ではない。伸隆さんのほうが10歳ほど年上だが、二人は対等だ。伸隆さんが愛美さんに上から目線でものを言うことはない。愛美さんもおっとりとしているようで、思ったことは言う。
「現場でお客さんと接しているのは私。お客さんの目線に立って『〜したほうがいいと思う』などと意見することも。ちゃんと聞いてくれますね」(愛美さん)

夫婦の時間は「つくるもの」

互いに忙しい共働きは、夫婦の時間が少なくなりがちだ。コミュニケーションを何より大切に考える二人は、できるだけ一緒に過ごすよう心がけている。最近、伸隆さんは、食のリサーチも兼ねて新橋のランチグルメを紹介するインスタを始めた。愛美さんを誘って行くことも多い。店に立つ愛美さんの勤務時間は午後3時から深夜に及ぶが、先日はその時間から、一緒にお茶漬けを食べに行った。

だから、夫婦の会話は多いほうだ。仕事の話もよくする。

「たいてい僕から、次こんなこと考えているんだけどどう思う? と話をふります」