2月21日に公開される映画『ダンサー そして私たちは踊った』は、物語の舞台であるジョージアでのプレミア上映の5,000枚のチケットが13分で完売されたほどの話題作だ。

しかし国内最大の教徒数をもつとされるジョージア正教会は、ジョージア国立舞踊団の男性団員同士の同性愛を描いた本作に対して、「ジョージアとキリスト教の価値観を貶める」との声明を発表し、上映中止を求めた。そして、なんと、プレミア当日には右翼部隊が映画館に突入し、空前の騒動が巻き起こったという。

同性愛やアイデンティティに目覚める主人公メラブを演じるのは、コンテンポラリーダンサーとしてジョージアで活躍するレヴァン・ゲルバヒアニ。監督にInstagramで見いだされ、本作でスクリーンデビューした彼は、21歳にして様々な映画祭で主演男優賞を獲得している。

レヴァン・ゲルバヒアニ

本作は、伝統的なジョージア舞踊を踊る青年たちの成長を描きながら、「~人らしさ」という社会規範が個人の幸せより重要視されることに警鐘を鳴らす。映画のプロモーションで来日した彼に、この右翼騒動の真相やジョージアにおけるジェンダーロールについて語ってもらった。

右翼騒動は陰謀だった!?

――本作は様々な国の映画祭で映画賞を受賞しています。国によって異なる反応がありましたか?

レヴァン・ゲルバヒアニ(以下、レヴァン):そうですね、ウクライナを含む東ヨーロッパはジョージアの反応と同じで、ほとんどの観客はこの映画を気に入ってくれましたが、ラブシーンになると映画館から退出する人が、10人足らずいましたね。ほかのヨーロッパの観客たちは皆、映画を気に入ってくれたようですが。

――しかし、激しいラブシーンはないですよね。

レヴァン:そうなんです。僕も、未だにこの作品のどこがタブーなのかさっぱり分かりません。ただ、ジョージアに限らず、ホモフォビアはどこの国にも存在していて、そういった人たちにはこの作品は受け入れられなかったみたいです。

『ダンサー そして私たちは踊った』より

――確かに過激派はどんな国にもいますが、ジョージアでは本作のプレミア上映に右翼部隊が映画館に突入しようとして、警察も集結するなど大混乱に陥ったとか。

レヴァン:僕も監督のレヴァン・アキンもあの抗議は意図的に計画されたものだと思っているんです。ジョージア政府、ロシアのマフィア、ジョージア正教教会、誰かは分からないけれど、あの右翼部隊は権力にお金で雇われて、当時ジョージアで起こっていたもっと重大な事件から国民の目をそらせようと仕組まれたものだと。

だって、抗議を起こすべきことはもっとほかにあったはずなんです。例えば、10年前にジョージアとロシアは戦争を起こしました。ジョージアは旧ソ連諸国だったんですが、ソ連崩壊後はロシアから独立し、親欧米路線を取ってきました。悲しいことに現在も両国の間には領土を巡る確執がありますが、最近、ロシアとジョージアの国境周辺に置かれているロシア軍が増強されているんです。