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遺言書にはないメリットがある…元気なうちに検討したい「家族信託」

自分の死後もこれで安心
他人事ではない不動産の相続トラブル。家族を守るためにも、元気なうちにやるべきこと、知っておくべきことがある。みなさんは「家族信託」をご存じだろうか? 遺言書よりも、はるかに自分の意思を反映できる制度だ。税理士が知らない不動産オーナーの相続対策』で知られる専門家集団、「財産ドック」が、この新しい制度について詳しく解説する。

遺言書の「4つの限界」

東京都にお住まいのEさんは、都内の広い敷地にご自宅と賃貸アパートを保有しており、不動産の知識にも明るい、非常に勉強家のオーナー様です。

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Eさんは自分で相続対策のための勉強をしながら様々な専門家の元に相談に行ったものの、これまでの相談先ではなかなか納得できる提案を受けることができず、不動産と相続に詳しい専門家を探していたそうです。話を伺うと、Eさんの奥様に認知症の初期症状が出始め、そのことをきっかけに、本格的に相続対策に取り組んでいかなければならないと思われていました。

Eさんは相続についてご自身で勉強する中で、相続対策の難しさを感じていました。Eさんが相続の相談のために信託銀行に行った際、遺言書を作ることを勧められたそうなのですが、遺言書には制約も多く、限界があると感じたそうです。

Eさんは次の四つの理由から、遺言書では自分の相続に対する想いを十分に反映できないと考えていました。

・奥様が認知症になってしまったときの対策ができない

・遺言書の書き換えや偽造ができてしまうというリスクがある

・相続人全員の合意があれば遺言書の内容が履行されない可能性がある

・二次相続に対する言及ができない

これらの点から、Eさんご自身に万が一のことがあったときにもご自身の意思を相続に十分に反映させるための手段はないものかと探し続けていたのだそうです。

遺言書でできることの限界を感じていたというEさんの話を聞き、最初に思い浮かんだのは、当時まだ十分認知されていなかった家族信託でした。家族信託であれば、Eさんが限界を感じている遺言書では足りない部分をカバーすることが可能だと考えたのです。

家族信託は、財産を持つ方が元気なうちに子どもや身内などに財産の名義を移して、運用方法を指定しつつ財産の管理や処分を託すことができる制度です。

 

例えば、父親が子どもに不動産などの財産を託して「自分や妻が生きているうちは、託した不動産の家賃収入は自分と妻のために使うように」と指定することもできます。

この場合、財産を任せた父親を「委託者」、委ねられた子どもを「受託者」といい、運用の利益を受ける人(父・母)は「受益者」と呼びます。さらに、孫・ひ孫の代まで財産の利用・運用・処分などの使い方を設定できるなど、他の相続対策とは異なるメリットを持っています。