銀行が「販売手数料」を取れなくなる日

「金融サービス仲介業」の破壊力
橋本 卓典 プロフィール

販売手数料は消える

2019年12月、フィデリティ投信は日本で取り扱うすべての商品の販売手数料を恒久的に無料にすると発表した。助言手数料に切り替えるというものだ。これは資産運用業界に極めて重要な一石を投じた。

販売手数料を取るというのは、投信のパンフレットや窓口のテラーの研修費用など、投信を販売する過程での費用を顧客に支払わせることを意味する。

しかし、そもそもパンフレットの見栄えの良さやセールストークを仕込むための研修費用をなぜ顧客が支払わなくてはいけないのか。それは顧客の価値なのか。当たり前のように顧客は支払わされてきたが、突き詰めていくと不可解極まりない。

さらに販売手数料が厄介なのは、商品を供給する資産運用会社・生命保険会社と、販売会社である銀行との間で何が行われているかが「ブラックボックス」となっている点だ。

例えば、販売会社が高い手数料を取ることができるような商品をつくるように資産運用会社に圧力をかけたり、生命保険会社が地銀の安定株主である立場を利用して自社の商品を優先的に販売するよう地銀に要請したり、まったく顧客価値とは関係のない「リベート」や「キックバック」が横行する温床となっているのだ。金融庁もここに目を光らせてきた。

ところが仲介手数料や助言手数料になれば、販売手数料の世界とは様変わりする。

仲介は文字通り、顧客の立場から最良のサービスに誘導することであり、前述の通り、あらかじめ「顧客に売り込む商品」を決めていること自体がナンセンスとなる。

助言手数料は、顧客に助言を認められてこそ成り立つものである。助言手数料に切り替わると、当然、銀行、証券会社などの販売会社における人事評価も変わらざるをえない。

すなわち、販売手数料では「売った者勝ち」の評価体系だったものが、助言手数料に切り替われば、「どれだけ顧客に価値のある役に立った助言をしたのか」どうかが評価のポイントとなるからだ。

同じ手数料でも金融機関の人間の動き方、情報の流れがまったく変わるのだ。