銀行が「販売手数料」を取れなくなる日

「金融サービス仲介業」の破壊力
橋本 卓典 プロフィール

銀行窓口は「販売」から「仲介」に生まれ変われるか

銀行が金融サービス仲介業者に登録した場合、大きく変わるのは、現在は(ほとんどの銀行で)取り扱うことができないラップ口座サービスが証券子会社を持つ地銀などで解禁されるという点だ。

ラップ口座とは株、債券、不動産、ヘッジファンドなど様々な金融商品・サービスで、まとまったお金の運用を一任(投資一任契約)で行うサービスだ。専門の運用担当者が売買判断、売買の注文執行を委ね、定期的な運用報告を行う。

ラップ取引を行うには、証券会社か信託銀行に専用口座を設ける必要がある。証券子会社や信託銀行を傘下に持つ金融グループの場合「代理」ということで、案内程度はできたが、金融サービス仲介業に登録すれば、より顧客本位なサービスが可能となるのだ。

店舗窓口が、単なるコストセンターに成り下がり、閉鎖縮小の流れであった一部の地方銀行にとっては、思わぬ「追い風」となる。対面の価値が相対的に「復権」するかもしれない。

ラップ口座は、プロに最適な運用判断を委ねることができる利点がある半面、資産運用に詳しい有識者からは手厳しい批判を受けている。なぜならば2%超にも及ぶ手数料の高さが資産形成効果を台無しにしてしまう危険性があるからだ。

そこで金融庁が注目するのは、りそな銀行が推進している低コストのラップ口座だ。地銀の場合は、子会社の証券会社に専用口座を設け、外部の金融商品を組み込んで運用するという道が拓ける。

これまでのように、あらかじめ手数料の高い金融商品を用意しておき、ノルマ販売で「オススメ」する現在の窓口販売を事実上、幕引きにさせようという意図が透けて見える。

完全なる仲介業者に移転した時、回転売買の温床となってきた利益相反な販売手数料は成り立たない。助言や提案の質を競ったり、成功報酬型の手数料に切り替わることになるのではないか。金融機関の対応が問われる。

かんぽ生命保険と日本郵便の保険不正販売で業務改善命令を受け、「創立以来最大の危機」(増田寛也日本郵政社長)となった日本郵政にとっても他人事ではない。

金融サービス仲介業をどう活用するのか、あるいはしないのか。その経営判断は注目に値する。全国に約2万4000ある郵便局網は、持続可能性が問われる地域社会においては、貴重なネットワーク資産なのだから。資産運用業界に与える影響は大きい。

問題は、この郵便局が顧客に対してどういう存在であろうとするのか、だ。ノルマを課したり、インセンティブとなる手当で職員を駆り立て、顧客の資産を毀損するような金融商品を売り続けるようでは、淘汰の道しか残っていない。

他方、完全なる仲介業ともなれば、ビジネスモデルの再構築が必要になる。その余力や時間が残されているのかどうかは筆者には分からない。未来を決めるのは、郵便局自身だ。