イギリス留学で体感した「初めての自由」

話しがそれたので元に戻そう。
陛下は、学習院大学では文学部史学科で、「中世の交通史、流通史」を専攻。
 卒業後は大学院を経て、23歳の時に、イギリスの名門オックスフォード大学マートン・カレッジに留学されている。

1983年(昭和58年)10月から2年間、普通の学生と同じように学生寮で生活し、自由を謳歌された留学時代は、陛下の貴重な青春の1ページであり、広く世界を知ることのできた、かけがえのない時間だったそうだ。

1985年6月15日、エリザベス国王、ヘンリー王子を抱いたダイアナ妃、そしてセーラー服を来たウイリアム皇子らと Photo by Getty Images

オックスフォード大学での研究テーマは「テムズ川の水運史について」。
指導教官の下で研究に没頭する一方で、自転車に乗ったり、カードで買い物をしたり、パーティで女の子とダンスを踊ったりと、日本ではできなかった体験を楽しまれていた陛下。その青春時代の楽し気な映像を見ていると、微笑ましいとの同時に、少し切ない気持ちになる。

日本に帰る日が近づいた頃、陛下はアメリカ人の親友キース・ジョージ氏に、こんな本音を打ち明けたという。

「今は嬉しい気持ちと淋しい気持ちが半々だ。日本に帰り、皇族として役目を果たすことは楽しみだ。だけど、オックスフォードで得た経験や友情は、僕にはもう二度と手に入らないだろうね」……と。

この言葉の中には、いずれ天皇となられる方の責任の重さと、ゆるぎない覚悟がこめられている。オックスフォードでの2年間は、陛下にとって、生まれて初めての、そして二度とない「自由な時間」だったのだ。

まるでオードリー・ヘプバーンの名画『ローマの休日』のように思えて泣けてくる……。

1979年、36年前の「皇太子殿下」お誕生日用の写真。当時の皇太子殿下明仁親王と浩宮徳仁親王。ご自身の運命を幼少期からしかと受け止めてきた 写真提供/宮内庁