高校の教師が「3年間自分が彼氏になる」

ピアサポート リボンの会」を作り、現在ピアサポート活動をしている涌井佳奈さんのところにも、さいきさんは話を聞きに行っています。涌井さん自身、高校時代に教師からの性被害に遭いました。その体験を聞くと、被害者が被害を認識しにくい状況が明らかになってきます。

「高校に入学してすぐに、華道クラブで使う花を持って廊下を歩いていたら教師から『花を活けてほしい』と呼び止められました。ところが部屋に入ったらスカートの下に手を入れられキスをされたというのです。そして『3年間、自分が彼氏になる。他の誰にも言っちゃダメだよ』などと言いくるめられ、関係をもつようになりました。加害教師は涌井さんの自宅に電話した上で、自宅前まで車で来て、車中で行為に及んだり、妻の留守中に家に連れ込んだりしたそうです。

最初に声をかけられる前、生徒として慕う気持ちはあったそうですが、恋ではありませんでした。それにもかかわらず、慕う気持ちにつけこまれ、洗脳されるような形で『恋愛だ』と思い込まされたのです。教師という、絶対的な上の存在の人から『そうすることが正しいのだ』と言われて、否定できなかった、洗脳と言ってもいいと思います」

抱きつかれたのは学校で、だった Photo by iStock

そもそも、もし本当の恋愛関係だとしたら、30代の妻子ある男性が、いえ、妻子の有無や年齢に関係なく大人の男性が、10代で将来のある教え子と、安易に性関係を結ぶでしょうか。福田和子さんがこちらの記事でも紹介しているように、スウェーデンでは2018年に「性的同意なき性行為はレイプである」という法律が可決されました。「性的同意」とは、きちんと本人の意思を確認できるフェアな状況下で確認することです。最初から権力のある教師と生徒との間に公平な「同意」を得るのは不可能です。

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また、安易な性行為は、たとえ避妊をしていても妊娠のリスクも生じます。恋愛というのであれば、相手の心と身体を大切にするはず。性教育を施さなければならない教師が、そういう現実を無視して自分の欲望を満たしていることは、交際なのでしょうか。

「妊娠した高校生は退学になることがほとんどですが、これは性的な問題が起こると女性が責められる例だと思います。女子生徒が『ふしだら』だったから妊娠したのだ、という評価を下されがちですが、当然いるはずの相手の男性は何の咎めも受けないことも多い。その不均衡が、性被害を受けた場合でさえ、女性を沈黙させるのだろうと思います。それに加えて、きちんとした性教育が行われていないせいもあり、性的なことを口に出しづらい。それが被害を訴えにくくしている面があります」(さいきさん)