保健室の取材を始めて
驚いた性暴力の多さ

「そもそもこの作品を書こうと思ったのは、取材先で知り合い、以降親しくさせていただいている秋山千佳さんからお聞きした話がきっかけです。秋山さんには『ルポ保健室』という著書がありますが、保健室は学校の中で唯一『評価を下されない場』として学生たちが駆け込み寺のように使うことを聞いたのです。取材をしていくと、家庭の貧困問題、親の虐待などを保健室でなら語ることができる、唯一の拠り所にしている生徒が多いこともよくわかりました」

秋山さんが著書を読んだ養護教諭たちから「こういうことを漫画にしてください」と言われたことを聞いたさいきさんは、保健室での話を漫画にしていこうと決めました。そうして取材を進めると、驚くほど性暴力にさらされている生徒たちが多いことがわかったのです。

ちなみに、文部科学省が発表した平成30年度「わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況」によれば、教師の性暴力に限ってみただけでも、平成30年度にわいせつなどで懲戒処分を受けた公立学校の教員は282名。うち44%が自校の子どもに対するわいせつ行為により処分されています。

学校はすべての生徒が安心安全に過ごせることが大前提のはずだが… Photo by iStock

「親、先生、同級生や先輩などから、多くの女性が性被害を経験し、心身に重い傷を負い、その影響を後々まで抱えていました。学校という特別な場での性被害は甚大な影響をもたらします。ある20代の女性は、中学生のときに教師から繰り返し性暴力を受けました。以降男の人の声を聞くだけでも怖くなり、働けなくなってしまいました。大学を出て、普通に生活していたはずだったのに、10年以上経ってPTSDが出てきた女性もいます。性被害がいかにその後の人生を狂わせるものか、それを伝えなければと思いました。中でも、複数の要因が絡まっているがゆえに、被害の発覚が遅れてしまう学校での性暴力を描くことにしたのです」

-AD-

「学校」での性暴力の特異性は、絶対的な権力の差にあるとさいきさんは言います。

教師とは、生徒にとって絶対的な権力者。先生がしたことは絶対だから、間違いはないと考えるし、教師もその権力を意識しています。『これはお前のためにやっている』『誰もがやっている』と言いくるめるので、被害者が被害の自覚を持ちづらいのです」(さいきさん)