「女性は寝てネタを取らないと」

もう20年以上前のこと。当時、筆者は23歳の新入社員で、週刊誌に配属されたばかりの駆け出し編集者でした。とある、様々なメディアに寄稿しているジャーナリストの方と、休みをとっていた上司の代わりに打ち合わせをしました。打ち合わせが終わり、「ちょっと一杯やろう」と誘っていただいたので、お食事をご一緒し、仕事の話をお聞かせいただくことになりました。

大きな事件の取材もされている方だったので、色々具体的な取材のことを教えていただこうとはりきっていました。しかし、その方は食事の席で、どんどん私に日本酒を注ぎ、こう言ったのです。

「君は新人だから教えてあげるよ。いいか、女性の記者は寝てネタを取るんだ。○○新聞の××もそうやってエースになった。それくらいでないといい記者になれないんだ」

ぬる燗を「もっと飲め」とドンドン注がれた中での言葉だった Photo by iStock

酔いも一瞬にして醒めるような衝撃でした。私は「でも……それが良い記者なのなら、私は良い記者にならなくていいです……」とやっとの思いで言いました。

身体が凍り付きました。上司が信頼しており、社会的に信頼を得ている書き手からの「教え」です。社会に出た身ではありますが、「はねつけたら私はダメな仕事人になるんだろうか」と思いました。同時に「もしかしたらこの人は今、自分を性的対象として見ているのだろうか」という恐怖も感じました。しかし、私が変なことを言って機嫌を損ねたら、上司に迷惑がかかるかもしれない。でも無事に帰れるのだろうか。実際、事務所に泊まるようにも言われましたが、なんとかその場をしのぎ、逃げるように家路につきました。上司にはすぐに報告をしました。

このようなことを思い返すと、ふと想像して鳥肌が立つのです、これが、まだ中学生や高校生の自分に対し、絶対的な権力と信頼をもつ、教師から言われた言葉だったらどうなのだろうと――。