福島県富岡町の桜(2019年4月、Photo by gettyimages)

「福島の放射能は遺伝する」という誤解が9年経っても消えない現実

デマと偏見が固定化されている

「次世代への影響」という偏見が根付きつつある

まもなく、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故から9年になります。たくさんの方々の善意と協力、努力で、福島の復興は大きく進んできました。もちろん、今も課題は多く残るものの、着実に前へと進み続けています。

一方で、時間とともに話題となる機会が減っただけで、原発事故による風評や偏見の一部は、解消されずに定着したままとも言われています。その実情は、2年前の2017年時点で、三菱総研による福島や放射線リスクへの理解状況調査によって明らかになっていました(参考:筆者記事「『福島は危険だ』というフェイクが、7年経っても県民を傷つけている」現代ビジネス、2018年3月11日)。

その状況は改善に向かったのでしょうか。前回調査から2年が経った昨年に行われた再調査の報告からは、

・福島の現状や事故による放射線の健康影響に対して理解は進んでいるものの、2年前と比べて大きな改善は見られない。

 ・2019年調査の時点においても、2017年調査と同様、約半数の東京都民が最新の科学的な知見とは異なり、放射線の次世代への健康影響を懸念していた。

 ・最新の科学的知見に反して、次世代への健康影響への懸念が続くと、国内の一部に差別や偏見の意識が根付いてしまうことが危惧される。

という厳しい状況が見えてきます(参考:三菱総合研究所「東京五輪を迎えるにあたり、福島県の復興状況や放射線の健康影響に対する認識をさらに確かにすることが必要」2019年11月28日)。

 

「世代を超えた影響」はない

まず最初に、一般の方々への浸透が懸念される最も深刻な誤解について、明確に否定しておかなければなりません。

人の遺伝について、放射線被曝による世代を超えた影響は、これまでの信頼性の高い調査では見出されていません。そもそも、東電原発事故によって、胎児の先天性異常が増加するようなレベルの放射線被曝をした方もいません。

今後、福島を訪れた人や、福島で一般的な生活を送っている人に、東電原発事故由来の放射線の影響で何らかの健康被害があらわれる可能性も考えられません。

これらは70年以上の時間をかけた広島と長崎の被爆者調査と、東電原発事故後の実測データから断言できることです。「福島での影響はまだわからない」などと言える時期は、とうに過ぎているのです(参考:早野龍五・東京大学名誉教授「特集 『遺伝的影響を心配する必要はない-福島への誤解』」日本原子力産業協会、2018年3月8日/福島レポート「福島第一原発事故による放射線被ばくの遺伝的影響は?」SYNODOS、2018年6月6日)。