【新島】NIIJIMA 
ロングビーチとモヤイの謎

羽伏浦海岸のロングビーチはとにかく気持ちがいい。サーフィンのほかボディボードの体験もできるとのことで、「次は挑戦したい!」と鈴木さん。南側にあるシークレットポイントにはサーファーたちの姿も。
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新島はかつて「東京のハワイ」と呼ばれたサーフィンの聖地。今でもその波を求めて全国からサーファーが集うと聞いていたけれど、なんと取材の日は大規模なサーフィン大会! どこの民宿も満室の嵐で、期せずして新島の人気ぶりを実感してしまった。

なんとか見つけた民宿に荷物を放り込んで、ロングビーチがある羽伏浦海岸に車を走らせる。海が見えてきたとき、目を疑った。波打ち際の白から澄んだ空色、孔雀色、紺碧へと繊細なグラデーションを作る海。白砂はどこまでも続いていて、終わりが見えない。

羽伏浦海岸の入り口には白亜のゲートが。海の青とのコントラストがきれいで、地中海みたい(行ったことないけど)。

式根島からすぐの島なのに、なんでこんなに海の表情が違うのか、本当に不思議で……」。ファインダーを覗きながら何度も声に出す鈴木さん。波が寄せるたびに色を変える海面を、飽きることなく撮影していた。

〈モヤイ物語〉で選びに選んで持ち帰ったミニモヤイ像。それぞれ表情が違っていて、見れば見るほど迷ってしまう。このお店の先代主人こそ、渋谷のモヤイ像を作ったレジェンド!

新島のもうひとつの見どころは、島中に点在するモヤイ像。何か信仰と関係があるのかと思ったらそうではなくて、かつて固有の工芸品がなかった新島に文化を築こうと、石職人が地元のコーガ石を使って作ったものだったのだとか。

メインストリートに並ぶ土産物店はどこも昭和の風情。ハワイを意識したダサかわなキーホルダーなんかもあって、楽しい。

これは偶然訪ねた土産物店〈モヤイ物語〉のおばあちゃんから聞いた話だけれど、実は新島のどこかに、渋谷駅西口にあるモヤイ像とそっくりのものがあるとか。そう、あの渋谷のシンボルを作ったのは新島の職人だったのだ。翌日、早起きして島中を探索し、船の出る直前にくだんのモヤイ像を見つけた。どこにあるかって? それはぜひ新島探検で見つけてください。

伊豆諸島名物の島寿司、新島バージョンは漬けにした白身魚にからしをつけていただくスタイル。

 memo 
東京・竹芝客船ターミナルから大型客船で約8時間30分、ジェット船で約2時間20分。東京・調布飛行場発着の航空便(新中央航空)で約40分。島の外周は約28km。民宿が多い本村集落に滞在する場合、羽伏浦海岸に行くなら車が必要。〈森田レンタカー〉など数社あり。〈前忠商店〉などの土産物店、レンタカー会社でも取り扱いあり。民宿のほか、〈HOSTEL NABLA〉などゲストハウスも。島寿司を食べるなら〈栄寿司〉へ。〈POOL/PARK〉は島食材を使ったカレーやアジアンプレートなどカフェメニューも 〈池村製菓〉の牛乳せんべいは素朴な味がやみつきに/新島観光協会☎04992-5-0001

【神津島】KOUZUSHIMA 
水の神様がすむ島。
私たちの「東京の海」

赤崎遊歩道の入り江は天然の水族館。少し潜っただけでおさかな天国で、「これが東京の海なのか!」と驚くはず。水深はあるけれど波が穏やかなので、子どもでも安心して海遊びを楽しめる。

「神津島」とは、なんていい名だろう。昔は「神集島」と書いたそうで、かつてこの島に伊豆諸島の神々が集まり、生命の源である「水」の分配について話し合ったという神話が由来になったと聞いた。実際、神津島は水が豊かで、あちこちに湧き水がある。名産の焼酎づくりに加え、最近では湧き水を使ったビール作りが始まったりと、島は常に「水の恵み」とともにある。

入り江に立派な遊歩道が設置された赤崎遊歩道。大人も子どももみんな海へダイブ!

もうひとつ、水の神様を感じた場所がある。島北端の〈赤崎遊歩道〉は、岩場に囲まれた入り江で、遊歩道に設置された飛び込み台からはひっきりなしに子どもたちが海にダイブしている。鈴木さんも真似して飛び込むと、数秒で海面に浮かんできて、身振り手振りでこちらに何か叫んでいる。

すごいです、海の中が……水族館!」水中メガネをつけて潜ってみると、その狼狽ぶりがよくわかった。鮮やかな熱帯魚の群れ、海面近くには小さなイカの家族が舞って、本当に水族館の水槽にお邪魔したような感覚になる。

「これが本来の海の姿なんですね」。海から上がって、しみじみと言った鈴木さんの言葉が忘れられない。

船から降り立つたびに、各島の海の色を見ていた鈴木さん。「伊豆諸島とひとことに言っても、ひとつとして同じ海がない。東京の海の多様性を知れたのも、この旅で学んだ大切なことです」。
1週間の島旅で真っ黒に日焼けした鈴木さん。「普段は登山ばかりしているけれど、海も大好きになりました」。

東京に暮らす私たちが「きれいな海を守ろう」と言うとき、どんな海を想像するだろう。地中海、カリブ海? もちろんそれでもいいけれど、1週間の旅を終えた今なら、迷いなく答えることができる。「きれいな海ってどんな海?」。それは船で数時間で訪れることができる海。私たちの一番身近にある、「東京の海」なんだ。

伊豆諸島を旅していて楽しいのが、各島の郵便局で押してもらえる風景印。神津島は神様が水の分配をしている神話がモチーフ。

 memo 
東京・竹芝客船ターミナルから大型客船で約9時間55分、ジェット船で約3時間5分。東京・調布飛行場発着の航空便(新中央航空)で約45分。島の外周は約22km。赤崎遊歩道へは車があると便利。村営バスを利用する手も。〈神津島レンタカー〉など数社あり。〈神津島オートサービス〉にはマウンテンバイクも。民宿のほか〈みんなの別荘 ファミリア〉などのB&Bも。地元産の明日葉を使ったクラフトビールを作る〈Hyuga brewery〉はおつまみも豊富。海のおともには〈藤屋ベーカリー〉の惣菜パンを。BBQするなら地元産の食材が揃う〈スーパーまるはん〉へ/神津島観光協会☎04992-8-0321

※記載したデータは2019年10月現在のものです。掲載の内容が変更になる場合がありますので、おでかけ前にご確認ください。伊豆諸島へ向かう大型客船、ジェット船は季節や天候などによってかかる時間が変わりますが、ここでは夏季の一般的な所要時間を掲載しています。詳しい運航状況や時間については東海汽船のHPなどをご覧ください。

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Photo:Mina Soma Text & Edit:Yuriko Kobayashi Model:Yuka Suzuki(MOUNTAIN COLLECTOR)