ビルに囲まれた東京の海。でもその少しだけ先に、青く澄み渡り、イルカが遊ぶ海があることを知っていますか? 自分が暮らす街と繋がっている「私たちの海」に直接触れたくて、伊豆諸島の島々を旅しました。

伊豆諸島は太平洋に位置する東京都の島嶼部で、無人島を含めるとその数は100以上。人が定住しているのは大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島の9島。今回は東海汽船のフェリーを乗り継いで旅ができる5島を紹介します

大島行きの夜行フェリー「さるびあ丸」が東京・竹芝客船ターミナルを出港したのは夜の11時。船が港を出ると、ライトアップされた東京タワーと都心のビル群が見送ってくれた。

●旅したのは……
鈴木優香/デザイナー。山岳収集家。1986年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。アウトドアブランドの商品企画部勤務を経て、デザイナーとして独立。現在は山で撮影した風景をハンカチに仕立てていくプロジェクト〈MOUNTAIN COLLECTOR〉を手がける。今はネパールでのトレッキングに夢中。

【大島】OSHIMA
東京から船で約2時間。
山と海が融合した火山島

早起きして、朝の海を撮影していた鈴木さん。「数時間前までビルに囲まれて窮屈そうな海にいたのに、朝起きたらどこまでも澄んだ海が広がっていてびっくり」

朝5時。大島到着のアナウンスで目覚め、船室のカーテンを開けると、想像よりずっと大きな島が目の前に現れた。外周約50㎞の大島は伊豆諸島最大の島(しかも東京に一番近い!)。数万年前に始まった海底噴火によって誕生した火山島ということで、島の地質のほとんどは溶岩や火砕岩。特に海辺には、流れ込んだ溶岩と、それが波に削られた荒々しい海食崖など、ダイナミックな景色が広がっている。

大島は伊豆諸島の中で東京から一番近い島。小型のジェット船なら最短1時間45分! 夜行の大型船は個室もあって快適。

千葉県出身で、幼い頃は地元の海で海水浴をしていたという鈴木さん。大島の港に降り立っての第一声は「えっ、海底まで見える! 東京にこんな澄んだ海があるなんて、夢にも思わなかった」と、何度も海を覗き込んでいた。

島の東海岸、泉津集落の二本松から海のふるさと村キャンプ場に至る大島公園海岸遊歩道は、海にせり出す溶岩地形を見られる気持ちのいい道。森の緑と海の青、溶岩の黒のコントラストこそが、大島らしい風景。

山や自然の写真を撮ることをライフワークとしている鈴木さんが「大島らしい海」をカメラに収めようと向かったのは、島の東海岸を海に沿って歩ける「大島公園海岸遊歩道」だった。海岸線ギリギリまで緑がのび、足元には黒色の溶岩。その先に青い海が広がる。噴火直後は一面の溶岩だった場所に、長い年月をかけて植物が根付き、豊かな森を作っていることがよくわかる。

「私は山をよく歩くのですが、こんなふうに森と海が密接に関わっている風景は初めて。自然の成り立ちを肌で感じますし、ダイナミックな風景の中を歩くのは冒険みたいでワクワクします」

溶岩に根付いた小さな植物たちは、小指の先程度の大きさ。みんな太陽に向かってたくましく育っていて、鈴木さんは這いつくばって撮影していた。

熱心にカメラを向けていたのは、溶岩に根を張り、たくましく育つ小さな植物たち。過酷な土地だからこそ生まれる生命の力強さに見惚れていた。

古くから椿の栽培と加工がさかんな大島。椿油と、椿油で仕上げたつげの櫛をお土産に。

 memo 
東京・竹芝客船ターミナルから大型客船で約6時間、ジェット船で約1時間45分。東京・調布飛行場発着の航空便(新中央航空)で約25分。島の外周は約50kmと広いので、車があるほうがベター。〈トヨタレンタカー〉など数社あり。〈レンタサイクルらんぶる〉など数社あり。観光ホテル〈大島温泉ホテル〉やゲストハウス〈Hale 海~Guest House・Oshima~〉など予算と好みに合わせて選択肢豊富。元町港近くなら新鮮な地の魚が食べられる〈魚味幸〉へぜひ! 農産物直売所〈ぶらっとハウス〉には大島バターや大島牛乳も。椿油を買うなら元町港前の〈阿部森売店〉へ/大島観光協会☎04992-2-2177