その道20年の研究者が語る、実はすごい「ホヤ」という生き物の秘密

ヒトを理解するために「ホヤ」を調べる
水品 壽孝, ブルーバックス編集部

ホヤは癒し系?

孵化した幼生の体長は1.5ミリ程度で、オタマジャクシのように水の中を泳ぐ。しかし、ホヤが幼生の状態にある期間は非常に短い。ホヤの幼生は成体が生息する場所に行き着くための手段にすぎないからだ。

マボヤの場合、孵化してから5、6時間で変態が可能になるという。幼生の先端部分がセンサーのようになっていて、ここが岩場などに付着すると変態が始まり、尻尾がギュッと縮んでいく。

大塚さんは、その短い時間しか存在しない幼生のホヤを観察。染色してラベリングした細胞がどのようになっているのかを、日々、調べているわけだ。まさに、「ホヤ一色」の研究生活といっていいだろう。

それにしても、そんなにホヤばかり見ていて飽きませんか?

「ホヤはどちらかというと、癒し系なんでしょうか。30年見ていても飽きません(笑)」

もう一つ気になることがある。大塚さんにとって、ホヤは研究人生の相棒と言っても過言ではない。そのホヤを食べることはあるのだろうか。

「はい、大好きです(笑)。やっぱり日本酒が一番合いますね。刺身だけでなく、蒸してみたり、アヒージョにしたりと、いろいろな食べ方がありますが、僕は塩辛やキムチに和えて食べるのが好きです。ちなみに、食用のマボヤの旬は夏です。夏のホヤは、身が厚くて、食べ応えもありますし、味もいい。僕らが研究に使っているホヤは卵に栄養分を取られているため身が薄く、食用には向きません(笑)」

被嚢から取り出されたホヤの身

最後にホヤを研究していて、一番うれしいのはどんなときか尋ねてみた。

「やっぱり自分の予想した通りの結果が出たときです。そんなときは『よっしゃぁ!』という気分になります(笑)。だから、いつまでたっても、ホヤ研究はやめられません」

いつの日かその努力が実り、ホヤの感覚神経が作られる仕組みの全容が解明され、先天的な感覚器の障害で苦しむ人たちが救われる日がくることを願ってやまない。


大塚 幸雄(おおつか ゆきお)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生命工学領域
バイオメディカル研究部門 脳機能調節因子研究グループ 主任研究員

動物の形がどうやって作られていくのか、そこにこだわって研究を続けてきました。気づけば、ホヤ一筋の研究生活も20年を超えました。ホヤは一見すると変わった動物ですが、実験に良し、食用に良しのスゴい奴です。ホヤという動物の意外なスゴさを皆様に知ってもらえるような成果を今後も出していきたいと思います。