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流行りの「草食男子叩き」「非モテ男叩き」が、あまりに理不尽なワケ

「男らしさ2.0」の強要にすぎない

変化した「草食系」のイメージ

近頃、ジェンダー論者やフェミニストの間で「草食男子」を批判的に再評価する流れがあるようだ。現代ビジネスでも、福島大学教育推進機構特任准教授の前川直哉氏が「草食男子」を批判する小論「『草食系男子』は、どうすればジェンダー平等への第一歩を踏み出せるか」を発表し、大きな話題となった。*1

「草食(系)男子」とは、もともとはコラムニストの深澤真紀氏が2006年に提唱したことばであるとされる。当初は「必ずしも恋愛に縁がないわけではなく、清潔感があり好印象でモテそうにも見えるが、しかし女性にがっつかない男性」のことを指しており、旧来の「男らしさ」や「抑圧的で家父長的なふるまい」からの脱却、という肯定的なニュアンスが含まれていた。その後じわじわと認知度が高まり、2009年には流行語大賞トップテンにも選出されている。

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哲学者の森岡正博氏は2011年、草食男子の登場について「男性優位のジェンダーロールを、男性が自発的に解体することを企図する『フェミニズムの勝利』である」として、肯定的に評価している。

〈草食系男子という男性たちがまとまって登場したことは、フェミニズムの勝利だと捉えてよいと私は考えている。なぜなら、草食系男子は、みずからが規範を産出して女性を制圧し保護するという意味での「男らしさ」を窮屈に感じ、その呪縛から自分で降りようとしている男性たちであるからだ。女性たちに糾弾されたからそうするというのではなく、自分たちの内発的な動機によってそうするわけだから、これこそがフェミニズムが望んでいた新たな男性像に近いのではないだろうか〉*2

だが時を経るにつれてその意味は変容していき、考案者が肯定的なニュアンスで用いていた草食男子ということばにも次第にネガティブな文脈が付与され、「草食男子≒モテない男、恋愛に縁がない男、無気力な男」――つまりは「男らしくない男」という意味で用いられることがもっぱらとなってしまったようだ。

 

たとえば、社会学系研究者の古谷有希子氏は2014年には草食男子のことを「わけのわからない負け犬男」であると述べている。*3 前川氏も、森岡氏の肯定的な評価には同意せず、草食男子に対する批判を展開する。

要約すれば、草食男子は自身に対する「男らしさ」の要求からは逃れようとするものの、一方で女性には「女らしさ」からの解放を許さない。それどころか、自分の生きやすさのために、むしろ積極的に女性に「女らしさ」を要求しており、いわば「美味しいとこ取り」をしようとしている――という主張である。*4