迷い猫のロシアンブルーを取り合う「この子はうちの子」驚きの騒動

ペット探偵「捜査の一部始終」

わが子同然のかわいがっている猫がいなくなってしまった! 絶望感に打ちひしがれる飼い主に寄り添い、一匹、一匹の性格や失踪時の状況、育った環境などを細かく分析して捜索にあたる「ペット探偵」の藤原博史さんの捜索の一部始終を、新刊『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記』 なかから、抜粋してお届けします。

闘病する妻を支えてくれた

「もしもし、ペットレスキューさんでしょうか。知人からこちらを紹介されて、ご連絡した高野と申しますが……」

5月の連休をひかえた夜、電話をかけてきた高野さんはためらいがちに話し始めました。たいていはホームページを見て連絡してくる人が多く、紹介を受けてというケースは稀です。

「うちからいなくなったのは、ロシアンブルーの雄猫です。ネコを運動させる小部屋で、いつも自由に遊ばせていました。ところが、あの日はちゃんと戸締りをしていなかったみたいで、いつのまにか脱走してしまったんです。どうか探し出してもらえないでしょうか」

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すっかり途方に暮れた声で、高野さんは語ります。私は引き受けていたケースを片付け、それから3日後に名古屋へと向かいました。

訪れたのは名古屋駅から電車を乗り継いで1時間ほど、丘陵を切り拓いて開発された新興住宅地でした。坂の多い町でアップダウンが続き、大規模なマンションも並んでいます。その一角に高野さんの自宅がありました。

 

すぐ居間に通され、ロシアンブルーが消えた状況を詳しく聞くことになりました。

「じつは僕の責任なんですよ。妻が大事にしていましてね、それを自分の不注意で逃がしてしまったものですから」

50代半ばと見える高野さんは奥さんと共稼ぎで、娘さんとの3人家族。以前から柴犬を飼っており、ネコを飼い始めたのは数年前、奥さんが病気をされたことがきっかけだったといいます。退院後、しばらく自宅で静養しているときに、高野さんが娘さんと話し合ってプレゼントしたということでした。

「家内にとってはいちばん不安な状態のときでした。でも、あの子がうちに来てくれたことが心の支えになり、一緒に病気と闘ってくれたのです。一生懸命世話をしてやりながら、家内自身も気持ちが癒されたのでしょう、おかげで順調に回復していきました」

奥さんが愛情を注いで育てたロシアンブルーの名前は「ソラ」。雄で、写真を見せてもらうと、全身がつややかなグレーの毛色でおおわれています。青色の首輪に鈴をつけており、スマートな印象を受けました。