2020.02.22
# 裁判 # 事件

母を殺した「50代の息子」に裁判官が語りかけた「意外すぎる言葉」

地裁が泣いた……
長嶺 超輝 プロフィール

母は「そうか、あかんか」と…

ケアマネージャー(介護支援専門員)が訪問してきても、男は居留守を使ってコミュニケーションを絶っていました。

どうやらケアマネージャーの対応に対して、不信感を募らせていたようです。自分の食事を2日に1回に切り詰めてまで、男は母の食事を優先し、介護を続けていたのです。

1月末、いよいよ家賃が払えなくなった男は、母を連れて繁華街へ繰り出します。

これが「最後」の親孝行のつもりでした。笑顔ではしゃぐ母を見るのは久しぶりでした。日が暮れて、帰りの電車に乗りこみますが、もう自宅へは戻れません。

 

川のほとりに座ったまま、ふたりは夜を明かします。盆地の中にある京都の冬の朝は、非常に冷え込みます。白い息を吐きながら、息子は覚悟を決めて、母に告げました。

「もう生きられへん。ここで終わりやで」

母は「そうか、あかんか」と、静かにつぶやいたといいます。

「他人様に迷惑をかけない」という、日本人の美徳が皮肉にも、ふたりをここまで追い詰めてしまったのかもしれません。

東尾龍一裁判官は、判決の言い渡しで特別に温情をかけ、懲役刑に執行猶予を付けました。

「母は、被告人に感謝こそすれ、決して恨みなど抱いておらず、今後は幸せな人生を歩んでいける事を望んでいるであろうと推察される」と理由を説明した後、男に対して、こう述べています。

「この裁判は、あなただけが裁かれているのではありません。社会全体のあり方が問われています」

さらに東尾裁判官は、法廷から現代日本社会へ向けて、高らかに問題提起をしました。

「介護保険や生活保護行政のあり方も問われています。こうして事件に発展した以上、どう対応すべきだったのか、行政の関係者は考え直す余地があります」

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