『パラサイト』は「富裕層vs.貧困層」の映画ではなかった

どちらの家族も陥っている「現代の悪夢」
真鍋 厚 プロフィール

向かった先は、高台にそびえる有名建築家が設計した大豪邸で、IT企業の社長であるパク・ドンイクの一家が暮らす。早速パクの妻ヨンギョ(チョ・ヨジョン)に認められたギウは、パク一家に取り入る巧みな「計画」を思い付く……これが物語の導入部となっている。

 

「計画」は必ず壊れる

パク家にうまく寄生することに成功したかに思えたキム一家だが、ある事件をきっかけにして、キム一家の「計画」は大きく歯車が狂ってゆく。

映画の中盤、予想もしない災害に見舞われたギテクは、息子のギウにこう語りかける。誰がこのような災害を予期できただろうか? 一時が万事、人生は計画通りにはいかない。「だから、そもそも計画しなければ失敗することはない。絶対に失敗しない計画、それは無計画だ」と……。

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近年、どの国でも経済成長は停滞するばかりで、政治改革は遅々として進まず、コミュニティは衰退の一途を辿っている。将来の見通しが立たずリスクが偏在化する中で、不安と恐怖が常態となった。日常のわずかな異変に「人生の歯車を狂わせる兆候」を見い出す感受性が拡大した。ありとあらゆる計画が、はじめから挫折を運命付けられているかのようだ。

キム一家のもつ、ましな生活を送るための「計画」――それは昨今流行りのギグ・エコノミーを内面化したような「他者を食いものにする計画」でしかない。ギテクがつぶやく「無計画」という言葉は、私たちが暮らす世界の深層にある普遍的なヴィジョンを呼び覚ます。

つまり、何も思い通りにはならない。そしていまや、すべてが「不確実性」に覆われている。

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