日本人はどこで「ダイヤモンド・プリンセス号」の対応を間違えたのか

アメリカを怒らせ、世界から非難され
松岡 久蔵 プロフィール

この板挟みの中で、ゼロリスクの正解は存在しない。すでに国内では、感染経路が不明な患者も発生するなど、「市中感染」の拡がる兆候も現れている。ウイルスの完全な封じ込めは不可能であることを前提として、やはり乗員・乗客の受け入れを決断し、可能な限り国民に理解を得られるよう訴えるしか道はないのではないか。

政府は「現状把握」と「世論への忖度」ばかりに追われ、すでに相当な時間を浪費している。いくら末端のスタッフが真面目で優秀でも、マネジメント層がリーダーシップを発揮できず、結果として危機対応の弱さを露呈する――まるで東日本大震災での対応の再演を見ているようですらある。

 

これは「ケガレ」の思想ではないか

また今回、日本が「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗員・乗客の受け入れを拒んだ背景には、「ケガレ」の思想もあるのではないだろうか。科学的根拠をないがしろにし、とにかく「汚れているものに触れたくない」という感覚は、多かれ少なかれ私たち日本人が持っているものだ。

新型コロナウイルスの感染拡大が騒がれ始めて約1ヵ月半が経過し、「感染力は強いものの、殺傷力はインフルエンザを下回る」との評価が定着しつつある。死亡者も高齢者や疾病患者が多く、手洗いや消毒を励行し咳などのエチケットを徹底すれば、感染リスクは抑えられるというのが専門家の一致した見方だ。

実際、シンガポールのリー・シェンロン首相は「恐怖はウイルスよりも殺傷力が高い」と、国民に通常の市民生活を営むことを呼びかけている。グローバル化が進み人の行き来が急増している現在、「ケガレ」から逃れることはできない。具体的なリスクの比較考量をした上で、受け入れ可能なもの、そうでないものを見極めてゆくほかない。