日本人はどこで「ダイヤモンド・プリンセス号」の対応を間違えたのか

アメリカを怒らせ、世界から非難され
松岡 久蔵 プロフィール

しびれを切らした米国

日本が検査機関を2週間と決めたのに対し、香港では1800人を乗せたクルーズ船をわずか4日の検査で入国させ、対応の違いが際立った。もちろん、新型ウイルスを文字通り「水際」で食い止めるべく慎重になること自体は、悪いことではない。しかし、平常時でもクルーズ船にはつきものとされるノロウイルスなど別の感染症が拡大する懸念もあり、長期の停泊はなるべく避けるべきであることには違いない。ある危機管理コンサルタントは今回の日本政府の対応について、こう解説する。

「一番まずいのは、一貫した方針がはっきりと示されていないことです。今回のような事態が起きた時、達成しないといけない目標は3つあります。(1)国内へウイルスを入れない、(2)船内での感染者を増やさない、(3)乗客の安全かつ早期の帰宅・帰国を支援する、です。

しかし今回、こうした方針が政府から明確に発信されていない。定期的に感染者数などの数字は公開されているものの、現状報告ばかりで、いつまでに何を目指すのか、何がどうなればひとまず安心できるのか、といった区切りが全く見えない。これでは乗員や乗客の不信感が募るのは当たり前ですし、乗客の母国の政府から、対応に疑問を持たれてもしかたない」

実際、しびれを切らした米国は16日、米国人の乗客約380人を旅客機で帰国させる手続きに入った。米国は自国民ファーストの国である。主権侵害の嫌いもないではないが、日本政府の後手後手の対応が頼りなく見えたのは間違いないだろう。

 

日本人の「対策できない病」

今回の新型コロナウイルス禍を通じて、日本人の「想定外の事態」への弱さがまた顕在化していることは、1月26日の「コロナウイルスで顕在化…安倍政権が『インバウンド・リスク』で躓く日」でも指摘した。「悪いことは起こってほしくない」「対策をしたら本当に悪いことが起きてしまう」という思い込みが勝りすぎて、最悪の事態まで想定した現実的な対策を考えることができない。

ダイヤモンド・プリンセス号は今、まさによからぬ進路を突き進んでいるように見える。そこには前例やマニュアルは存在せず、官僚にできる対処にも限界がある。政治決断だけが勝負といってもよい。

とはいえ安倍政権にとっては、進むも退くも地獄という状況だ。乗員・乗客を感染者を含め上陸させた場合、「国内感染を広げるつもりか」との批判が巻き起こるのは必至。かといって、このまま全員の検査が完了するまで船内待機を続けさせれば、状況は悪くなる一方だ。