「バカになっちゃった方が幸せ?」退職後に幸福になれる方法とは

前野先生と「幸福」について考える
前野 隆司, 石井 徹 プロフィール

能天気に「人のためだ」と思い込んでみると幸せに一歩近づくかもしれない

石井:僕がいま、いちばん幸せな瞬間は、子どもに英語を教えているとき。子ども好きだから、そりゃ幸せなんですけど、こういうのの積み重ねをやって行くと何か見つかるもんなんですかね。先生の著書『幸せのメカニズム』(講談社)にも書かれていますけれど、利己主義じゃなくて利他主義にした時に幸福が生まれると。でも現実的には、会社では利己主義の塊みたいな人がえらくなってるのを見ています(笑)。

 

前野先生:利己的に金儲けで偉くなった人ってのは厄介だと思います(笑)。そういう人は、会社で働いているうちはいいんですけど、退職すると途端に幸せから遠ざかってしまう。本にも書いていますが、幸せになるには非地位財が必要です。地位財はお金やもの、目に見える豊かさです。それに対して、非地位財とは、健康、愛情、人間関係など目に見えないものです。利己的にえらくなった人は地位財で幸せを感じているので、退職して地位がなくなると幸せを失ってしまいます。

石井:とはいえ、社会は利己的なビジネスマンで成り立っているじゃないですか。みんなが利他的だと経済が回らない。特に働き盛りの30・40代なんて、利己的にガツガツしますよ。

前野先生人生の全てを利他的にする必要はないと思います。働き盛りの頃は利己的に利益を求めて、そこから緩やかに老後に向けて「人のため」を実行していくとか。最近は副業も盛んですし、メインの仕事以外に何か人のためになるような活動をするといいかもしれません

うちの義理の父は会社で出世しなかったけど、定年後おもちゃを直す活動や、庭師の仕事とか、人のためになることをいっぱいやって街の人気者になっています。そんな父曰く「出世した人はみんな死んだけど、俺は今が一番幸せ」らしいです。

石井:なるほど、ボランティアかあ…。

前野先生:無理矢理やりたくないボランティアをやるっていうのはよくないですよ(笑)。でも、まさにこの英語を教えてらっしゃるっていうのは利他ですよ。石井さんは自覚がないかもしれませんが、もうすでに利他的な活動をされている(笑)。そんな感じだと思います。無理やりボランティアをする人がいい人だっていうことではなくて、気づくとやっぱりこういう利他的な行動をすることが幸せになっているっていうことです

あとは、気の持ちようですよ。僕だって、本の印税でお金をもらっているし、学生に教えてお給料をもらっている。言い方を変えれば「お金のために本を書いて、お金のために教えている」ということですよね。でも自分で、「これは人のため」と思い込んでいる。給料もらったとか印税もらったとかすっかり忘れて、みんなのために本を書いて協力しているって。全ての仕事は思い込めると思うんですよね。

石井:それは意図的に、言い方は変ですけど…、バカになっちゃったほうが幸せっていうことですかね?

前野先生:それはあるかもしれないですね。記憶力が悪い人の方が幸せですから。僕は元から記憶力の悪い人間なので、人より幸せになるのが得意かもしれません(笑)。

文・金延 紗衣