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知らないおじさんに「連れ去られそうになった」私のその後

方向音痴のせいで

あれは…誘拐?

高木です。いきなりですが今月末に『さよならが言えるその日まで』というタイトルの小説を出します。とある田舎町で小学五年生の男児が誘拐され、その容疑者と思しき男性が事故死する……そして残された容疑者の一人娘が、事件の真相と男児の行方を追って彷徨い歩く話です。

この物語には二人の主人公が登場します。高校三年生の女の子と、小学五年生の男の子です。原稿を書いているときは、自分が彼らくらいの年齢のときはどんなだったかな……と思い起こす瞬間もしばしばありました。

人と話していると時々気づくのですが、自分は割と子供の頃の記憶が多く残っている方のようです。

通常、人間というものは人生色々あるうちにだんだん古い記憶が押し出されて消えてしまうように思います。しかし自分はそんなにがっつりとした「色々」がなかったため、古い記憶がまだ頭の片隅に滞っているのでしょう。

 

たとえば幼稚園の頃に住んでいた自宅は建物の三階で、バイクで通勤する父の姿を出窓から見下ろして見送ったことをよく覚えています。

赤色と黒色のバイクにまたがった父は、基本的にカッコツケなところがあるので、ヘルメットを被ると全然上を振り向きません。なので私が「いってらっしゃあああぁああぁあいっっっ!!!」と絶叫しても素知らぬ顔で颯爽と発進してしていきました。

私の絶叫はこだまのように近隣に響いて、どこか知らない遠くから「行ってきまあぁぁああぁぁす!!」と知らない子供の絶叫が返ってきたことは一度や二度ではありません。最終的には、父を見送るというよりも「今日は返事が返ってくるかな?」が目的となっていたような気がします。