母には内緒で起業

起業してからもうすぐ4年になる。未だに困難ばかりだが、今が一番充実している。最初は数名からスタートしたドローンジョプラスも約100名に増え、寝る間も惜しんでがむしゃらに働いていたときに比べて、生活に余裕も出てきた。時期によっては会計士時代より忙しいときもあるが、ハードワークすることを自分で選択しているからまったく苦じゃない。

起業する直前、けじめをつける意味も込めて会計士資格を抹消した私に対して、「せっかくあんなに頑張って取った資格なのに!」と父と二人で大反対してきた母も、今ではとても応援してくれている。と言っても当時はそれ以上心配させたくなかったので、起業することは伝えていなかった。結局母が私が起業したことを知ったのは、昨年私が母校の大学で講義をした際、母が学生に混じって聴講に来たときだった。講義内容はほとんど分からなかったらしいが、私が話している姿を嬉しそうに動画に撮って父に送っていた。

私は今後もずっと仕事をしたいと思っているが、自分とは真逆の生き方をしてきた母のことを心から尊敬している。それは起業したときも含めて、母が常に私がやりたいことを受け入れ、自分のことはさておき子どもたちが伸び伸び成長するよう全力を尽くしてくれたからだと思う。

いつも私と弟が自立したら、他に楽しめることを見つけなければと言っていた母だったが、今ではパートで近所の子どもたちに勉強を教えている。たまに実家に帰ると「〇〇くんがこんなことができるようになった」と嬉しそうに話してくれる。

まだ子どもはいないが、私もいつか母親になりたいという気持ちもある。もちろん、相手ができるのか、そして授かるのか、それは誰にもわからない。でもそうなったら私は母みたいにたくさん愛情を注いで育ててあげたい。とはいえ母ほど人生を捧げて子育てをする自信はないので、育児も含めて自分らしく生きていきたいと思っている。

「働き方」は人それぞれだ。井口さんの母親は、商社で勤務ののち、家にいない父親の代わりに「必ず子どもたちを支える」という専業主婦としての仕事をした。井口さんが自分でバリバリ働くことを自然に選んだのも、親への反抗心ではなく、自分が何をしたいか、どう生きたいか、を自分で考えたからだ(写真はイメージです) Photo by iStock