将来の価値は?

次に気にしたのは、今後35年で、この築浅のマンションがどんな価値を維持できるか? という点である。なんせ、35年とスパンが長いので、歴史を振り返って見ることにした。東京都内で長いこと価値が落ちにくかった土地はどんな場所か? 江戸時代まで遡ってみると「地盤」が大事そうだということが見えてきた。

沢山の地震や水害など災害と隣り合わせだった「東京」にとって、固い地盤や海抜の考え方というのは、歴史的に重要視されてきている。なるべく海や川から離れた、海抜の高い土地、できれば周囲に神社などもあるような、長く大事にされてきた土地を選んだ。結果的に、坂の上に位置するこのマンションはその後の地震や水害の影響を受けず、どんな逆風にも力強いパフォーマンスを見せてくれた。

立地と同じぐらいこだわったのはマンションの向きである。四季に恵まれた日本では南向きの角部屋が一番過ごしやすい上に、ジメジメしないのでカビなどに悩まされることもない。「すべての部屋に太陽の光が降り注ぐ家」というのが理想だった。買ったのは2LDKの、親子2人がやっと暮らせる程度の小さな部屋だったが、リビングもダイニングもそれぞれの部屋も、すべての部屋が「北」を向いていないことを条件とした。

地形や気候をみて、自分の好みや他人の好みを考えて、そして「出せる金額」を考える。「これだけは」の条件を具体的に頭におくことは大切だ Photo by iStock

また、当時流行り出したばかりのタワマンの落とし穴というのも囁かれ始めていた。例えば巨大なタワマンの場合「エレベーターが一生来ない」「エレベーターに乗るのに行列ができている」「パーティルームなどの共有施設が取り合い」機械式駐車場が「一生降りてこない」など。この辺りは念入りにチェックし、タワマンだとしても比較的規模の小さいマンションに絞ることにした。

35年の借金をしてマンションを買うベストシナリオは「買った値段より高値での途中売却」だが、なんせ完済するのは35年後である。もしかしたら「私は死んでるかもしれない」というのも押し材料となった。住宅ローンには団体信用生命保険(※1)というのがついていて、死んだらそれっきり、ローンがチャラになる。ローンを払わずに自分の物となるので、相続税の支払いだけで子供に住む場所だけは確保してあげることができる。私が若くして命を落とした場合「この家が娘を守ってくれるだろう」と願をかけた。

万が一娘が遠い親戚や血縁もない人に引き取られるような事態になったとしても、きっとこの家があることで皆さんから優しくしてもらえるだろう。単なる厄介者として親戚中をたらい回しになることもないだろうし、もしかしたらこの家を売却して留学や進学の費用としたり、人生を力強く生きていく土台としてくれたらそれで良い。35年の「人生のドラマと時間」を買える商品。それが住宅ローンで買う不動産なのだ。