とはいえ、もちろん不安要素も否めません。それは、以下のことです。
エアーポッドが付け加わり、ズームXが増量して、前足部は安定性確保のためにさらにワイドなデザインとなり、その面積を覆う、ゴムのアウトソールの量も増えたことで25g程重くなったようです。また、私がフォローする選手からは、ニットはやや足の固定性が不安とコメントがありました。
ヴェイパーフライもトップ選手が記録を出すためのシューズであり、アマチュア選手が履きこなすのが難しいシューズでしたが、今回のアルファフライはさらに扱いが難しく、東京オリンピックなどで採用する場合は一刻も早く手に入れて、その靴を履きこなすための練習をする必要があるはずです。このシューズは足の着き方がミッド~フォアフット走行のランナー限定で、走りにかなり慣れている選手のみ記録を出す手助けをしてくれるシューズであると言えるでしょう。
プロトタイプと比べて、「アルファフライ」の市販品が、カーボンが3枚から1枚になり、エアーポッドが2層から1層になったのはユーザーにとってはむしろ、良いことだったと思います。そこまでやったら履きこなせる選手があまりにも限られ、オリンピック開催という時間と戦っているのか、他の選手と戦っているのか、はたまた、シューズと戦っているのか、本質がわからなくなってきてしまったでしょう。その点で今回発表された「アルファフライ」は、規制の範囲内で出せる最大の効果を実現できる可能性があるシューズだと考えます。
カーボン3枚、エアポッド2層の靴を、キプチョゲ選手の「フルマラソン2時間切り」を介して世の中に知らしめたのは、まるで大国が軍事パレードを開き、強烈な兵器を見せつけたかのようなインパクトを他社に与えたはずです。激化するシューズ開発競争のなかで、どのような反応を今後、他社は実際に示すのでしょうか。