ナイキの新型厚底シューズ「アルファフライ」圧倒的強さと「不安要素」

「日本人インソール技術者」が徹底解説
冨永 琢也 プロフィール

レース後半戦にも耐えうる秘密

【カーボンの形状が直線でなく下方向に曲がっている】
これは、ヴェイパーフライネクスト%も同様ですが、カーボンの形状が直線ではなく、ある所から下方向に曲がっています。これには重要な意味があると私は考えます。この曲がりがあることで、<反発性の時間差>と<安定性・衝撃吸収性・反発性>のバランスを作りだしているのです。

シューズを真ん中で切断した画像。実際のカーボンの位置が分かる
 

<反発性の時間差>とは、足の中央部より後方(後足部)では前足部と比べカーボンの上の反発材(ズームX)が薄く、カーボンの下が分厚くなっています。この場合、足からカーボンへ力がより早く伝わり、カーボンの下にたっぷりしかれたズームXで前足部より早く反発を得ることができます。一方、前足部では足からカーボンまでのズームXが後足部より分厚いため、沈み込み時間が長くなり後足部よりも遅く反発を作り出します。

これにより生じるメリットは
●後足部から前足部への重心移動が反発性の時間差により促される
●最も傷めやすい前足部はしっかりと衝撃を吸収できる
●後足部で得た前方への重心移動はそのまま前足部のカーボンを効率良くしならせてカーボンの板バネ反発を最適に得ることができる。

などが挙げられます。これらのように、カーボンを途中で曲げて、カーボン上下のズームXの厚さを調整することで、効率の良い走りが作られていると考えられます。

赤枠で囲んだ部分が立法骨(cuboid bone)photo by iStock

次に安定性・衝撃吸収性・反発性のバランスですが、足からカーボンまでのズームXの厚さが大きいほど衝撃吸収性は向上しますが、安定性と反発性は低下します。反対にカーボンまでの厚さが小さいと安定性と反発性は向上し、部分的な衝撃吸収性は低下します(部分的とは、母趾球などピンポイントでの衝撃吸収性を言います)。カーボンが曲がる位置は足の「立方骨」を通過したところから、下方向に曲がり始めます(上部画像参照)。

これはインソール作製でもかなり重要なポイントなのですが、立方骨部をいかに安定させるかが足そのものの安定性にとても重要です。立方骨までは安定性をできるだけ確保させることで足の裏の体重が駆け抜ける軌跡を親指方向に促します。これにより後足部はなるべく安定させながら、前足部はマラソンや駅伝の後半戦に備えてしっかりと体をいたわる形状になっていると考えられます。