ドイツ政局に大嵐を巻き起こした「前代未聞の珍選挙」その顛末

カギを握るのはやはりあの「極右政党」
川口 マーン 惠美 プロフィール

まさかのハプニング

すったもんだの末、結局、これまで通りの3党で過半数割れの政権を作るしかないということになり、5日、議会で州首相指名選挙にまでこぎつけたわけだ。1度目の投票で誰も過半数を取れない場合は、2度目の投票となる。2度目も同じなら、3度目の投票となる。

 

左派党、SPD、緑の党の票数は、合計42票で、過半数(46)に4票足りない。しかし、CDUとFDPは、前述の通り、左派党に投票することを拒否したため、選挙は予想通り、3度目にもつれ込んだ。3度目の選挙では、過半数ではなく、一番得票数の多い候補者が首相として選出されることになる。

さて、3度目の投票で候補者として立っていたのは、左派党のラメロウ氏の他に、AfDとFDP。FDPは90議席のうち、たった5議席を締める弱小政党であるのに、なぜ候補者を立てたかというと、極右のAfDと極左の左派党の一騎打ちとなることを阻止するためだったという。CDUが候補者を立てないのなら、その代わりにFDPが中道の存在を示そうとしたらしい。

〔PHOTO〕gettyimages

いずれにしても、シナリオでは、これで左派党のラメロウ氏が最大票を獲得し、予定通り、過半数割れの左派政権を作るはずだった。

ところが、ここでまさかのどんでん返しが起こる。AfD議員団が自分たちの候補者に票を入れず、一致団結してFDPの候補者に投票した結果、お飾りであったはずのFDPの候補者が第1位になってしまったのだ。AfDの目的は、極左政権の続投を防ぐことだったというが、それが見事に大成功したわけだ。

発表された途端、1位になったFDPの候補者ケメリッヒ氏は見るからに驚愕していたが、あるいは、これは演技であったかもしれない。と言うのも、このハプニングが、どこまで工作されていたかが未だにわからないからだ。

しかし、ケメリッヒ氏は動揺しながらも、皆が呆気にとられている中、州首相に就任。ケメリッヒ氏と握手し、祝辞を述べるAfDの代表。それを見る左派党のラメロウ氏の愕然とした表情が、ものすごく印象的だった。

一方、左派党の党派代表の女性議員は、前に進み出たかと思うと、ラメロウ氏に渡すつもりで持っていた大きな花束を、新首相の足元に投げつけた。いくら頭にきたとはいえ、ひどく醜い行為だった。それこそ民主政治が泣くのではないか。